猫ちゃんが、息苦しいとき
息苦しいというのは、その猫ちゃんはもちろんですが、苦しいのが手に取るようにわかるだけに、見ているご家族にとっても、苦しいことです。
息苦しい理由には、いく通りかあります。
胸水といって、肺の周りに液体が溜まっている場合。肺が膨らめないので、息を十分吸えなくなります。液体といっても、膿や血液、あるいは、癌やウイルス、細菌による炎症により浸み出た液体、血液中の蛋白量が少ないせいで浸み出た液体、血圧が高いせいで浸み出た液体と、その原因になる病気によって様々です。逆に、胸水の性状や出てきている細胞を調べることは、原因の病気を探る大きな手がかりとなります。
肺水腫もしくは、肺出血。いずれも、肺の中に液体が溜まった状態です。肺水腫の原因として、最も多いのは、心不全による肺高血圧症ですが、感電した時にも生じます。肺出血は、外傷による他、殺鼠剤などの血液がかたまらなくなる薬剤でも生じます。なので、その経緯や、心臓疾患がないか等で判断することになります。肺炎や肺腫瘍も含め、肺の換気能が悪くなるために、息苦しくなります。
逆に息が吐けなくなる病気もあります。喘息などの気管支疾患や、肺気腫といって、肺に空気だまりが出来てしまう疾患です。
気胸といって、肺の周りに空気が溜まっている状態。原因として、最も多いのは、転落事故や交通事故によるもので、肺が破れて胸腔内に空気が漏れ出る場合か、皮膚側から、胸腔へ通じる外傷により、空気が入ってしまう場合です。肺気腫も、その空気だまりが破けてしまうと、イッキに気胸を生じるとともに、その肺がまったく膨らめなくなるので、突然、致命的な呼吸困難を生じてしまうことがあります。
息苦しいといっても、これだけ様々な容態や原因がありますし、それぞれ対処方法が異なりますので、まずは、その理由を探らなければなりません。レントゲン、血液、超音波、胸水検査など、いく通りかの検査を組み合わせて、謎解きをすることになります。
ですが、本当にシビアな呼吸困難を起こしている場合は、検査される緊張にすら耐えられません。あってはならないことですが、検査途中に呼吸が止まってしまうということも、ありえることです。
息苦しさが激しいほど、「早く、対処しなければ」と、気持ちは逸りますが、教科書的には、ここで、事を急いではならないのです。「呼吸困難を起こしている動物は、いきなり検査や処置をしようとせず、まず、安静を保たせることと、十分に酸素化すること。」と、習います。興奮している動物には鎮静剤を投与して落ち着かせて、酸素室に入れてそーっと見守ります。「早く、なんとかしてよ!」腹立たしく思われるかもしれませんが、これが、正しい対処なのです。
ですが、延々、そーっと見守っていては、それ以上の処置ができません。どの時点で、検査に踏み切るか。いかに手際よく済ませるか。こんな時、獣医さんは、結構、気合を入れて勝負に出ます。
猫ちゃんは、息苦しくなるものの中でも、胸水が溜まることによる病気がとても多いのです。猫伝染性腹膜炎ウイルス感染症は猫ちゃんだけの病気ですし、膿胸や胸水が溜まるタイプのリンパ腫が、ワンちゃんより圧倒的に多いからでしょうか。そして、その量も、ワンちゃんに比べると、身体のわりに多いように思います。それだけ、猫ちゃんは重篤になるまで解りづらいのではないでしょうか。
ですので、溜まっていた胸水をお見せして、「こんなことになるまで、気づいてあげれなかったなんて。」と、ご自身を責められると、なかなか解らないものなので、そんなに思いつめないでいただきたいと、心苦しく思ってしまいます。でも、この勝負のドキドキは、結構しんどいので、せめて、検査に耐えれるうちには気づいてあげていただきたい!というところが本音なんですけど。
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