2009年11月 6日 (金)

長老猫ゆきおちゃんとのお別れ

とうとう、我が家の長老猫ゆきおちゃんとも、お別れしなければならなくなりました。このお話を、どんなふうに、何から始めれば良いものやらと、考えあぐねている間に、すっかり、ブログをお休みしてしまいました。

ここ2年ほど、体調を崩すたびに、(もう、そろそろ、難しいかも。)という予測に、嬉しい裏切り=復活を繰り返してくれておりましたが、今年の夏ばかりは、絶対、乗り切れないだろうと、覚悟はしておりました。

夏は、猫様達のために、日中も、エアコンをつけっ放しにしてはおりましたが、それでも、耐えられず、ハアハア、ヘロヘロに弱って、痩せてしまったゆきおちゃん。何とか体調維持せねばと、無理に、フードを食べさせようとするのですが、息があがってしまい、かえって、負担になってしまいます。

そこで、先だって、このブログでも紹介した、チューブ・フィーディングをすることにしました。鼻の穴から、胃の少し手前まで、チューブを入れます。顔に、何ヵ所か留めておきます。これで、無理に口を開けられ、飲まされていた薬や、無理やりつっこまれてたフードから解放されます。普通は、自分でチューブを抜いてしまわないよう、エリザベスカラーを着けるのですが、ゆきおちゃんは、おバカなのか、全く気にとめず、ほっぺたに、チューブの端をプラプラさせながら、超ご機嫌でした。

チューブから薬と、流動食を流し込むのですが、ウロウロされると、やりずらいので、あごの下をなでたり、額をなでたりと、ご機嫌とりしながらやっているうちに、ヒト好きなゆきおちゃん的には、その高待遇がとてもお気に召したらしく、流動食を手に持って、「ゆきお!」と呼ぶと、ピョンッ!と、ソファーの横に鎮座して、ゴロゴロ、ゴロゴロのどを鳴らすご機嫌ぶり。

真夏の1ヶ月間。ゆきおちゃんの、チューブ・フィーディングは続きました。ゆきおちゃんは、かつて無いほどにかまってもらえて、超お喜びだったことと思います。それに、少しずつ、体調を取り戻し、食欲も出てき始め、涼しくなり始めたころには、「これは、ひょっとして、またも復活か!?」と期待してしまっていましたが、お別れの日は、思ったより、突然でした。

まさか、亡くなる日だとは思えない感じで、小食ながらも、朝ごはんを食べ、このところ、ずっとそうだったように、多少、疲れたかんじの表情でしたが、ホントに、まさか亡くなる日だとは思いませんでした。

私が、帰宅するのを、待っていたようでした。いつもとは、違う居場所に横になっていたので、「珍しく、こんなとこにいる…」とだけ思いながら、ゆきおちゃんの横を通り過ぎようとしたとき、「…んにゃあ…」と救いを求めるような悲壮な鳴き声。「え!?」っと、覗き込むと、ハアハアと肩で息をしながら、必死の表情で私を見上げている、ゆきおちゃん。

「これは、ヤバイ。」瞬時に思考をめぐらしました。ゆきおちゃんの命がヤバイのは、確信です。それは、もはや、どうしようもないことも、ほぼ確信です。ヤバイのは、その日、ゆきおちゃんの本来の飼い主である、主人が福岡へ出張に行っていたことです。最終の新幹線で帰宅すると聞いていましたので、まだまだ、帰ってくるはずがありません。「最期に会わせてあげたい。」という「ヤバイ」です。

何とか、時間をかせげないものかと手をつくしましたが、思いの外、時間をかせげないままに、意識がなくなってしまいました。それでも、主人の到着を待って、ゆきおちゃんは、息をひきとり、心臓が完全に止まるまで、二人で見守ってあげることができました。

覚悟はしていたものの、かなり、想定外なお別れでした。やっぱり、生き物の生死は、予測しきれないものです。

「ゆきおー!」と呼ぶと、どこからか、「ニャニャニャニャニャー!」と駆けて来た、若かりし頃のゆきおちゃんが、ふと、廊下の向こうから、やってきる錯覚がしたりして、ちょっと、寂しんぼになっている気分をぶち壊すかのように、ズンッ!ズンッ!と、頭付きで攻めてくる、次男坊の虫太郎。てっきり、ヒト嫌いなのかと思っていましたが、どうやら、ほんとは甘えたかったのに、いつも、ゆきおちゃんに先を越されて我慢してたんでしょう。チャンス到来!とばかりに、甘え倒してくる虫太郎に、複雑な気がしないでもありませんが、そんな、悪気も何もない表情をみていると、寂しがってるのもどうかな…、と、「前向き(?)」な猫的発想に、ある意味、励まされたりもします。

それでも、お別れは、やっぱり寂しいですが、それよりも、たくさんの楽しい思い出をくれた、ゆきおちゃんに、感謝、感謝です。

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2009年10月29日 (木)

臨時休診のお知らせ

10月30日(土)

研究会出席のため、臨時休診とさせていただきます。

ご迷惑をおかけいたしますが、あらかじめ、ご了承のほど、お願い申しあげます。

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2009年10月 8日 (木)

チューブ・フィーディング

その名の通り、チューブから食餌を与える方法です。鼻の穴から胃の手前までいれるチューブの他に、頚部から、直接、食道にいれるチューブや、腹部から、直接胃内にいれるチューブがあります。鼻からいれるチューブは、ゼリー状の局所麻酔薬だけで、挿入しますが、食道や胃に直接いれるチューブは、全身麻酔が必要です。

食欲が落ちてしまった動物の体調維持、回復を支えるのに、口から摂る栄養に勝るものはありません。よく、「食欲が無いので、栄養の点滴をしてください。」とか、「点滴してるから、食べなくても大丈夫ですよね。」と、云われることがありますが、一般的に行われている、皮下点滴や静脈点滴は、水分補給に過ぎず、栄養にはなりません。たとえ、ブドウ糖の含まれた点滴剤であっても、血糖値を維持する程度の量で、すぐ、分解されてしまいますから、栄養にはならないのです。

ですが、身体の水分やミネラルのバランスを保つことが、まず、第一優先ですから、食欲の無い動物に、点滴治療はかかせません。まだ、十分に発育していない幼獣でもなければ、数日間、食べなくても、水分補給さえ怠らなければ、蓄えてある栄養分を分解して、持ちこたえることができます。ですが、長期間の食欲不振となると、皮下脂肪を分解しすぎて脂肪肝を起こしてしまったり、貧血や低蛋白から、全身の様々な機能が悪くなり、どんどんと、悪循環を起こしてしまいます。

もちろん、吐き気がひどい、下痢がひどいなどの問題がある場合は、口から栄養を摂ることはあきらめざるを得ず、本当の「栄養点滴」に頼るしかありません。栄養点滴をするには、頚部の静脈から心臓近くの太い血管まで、管を入れる必要がありますので、たいていは、全身麻酔が必要ですし、雑菌が入り込みやすい点滴なのですが、動物では、衛生管理も難しいこともあり、あまり、頻繁にはされていないかと思います。

そこで、そういった消化器症状のない容態なら、口から摂る栄養に勝るものはないという訳です。必ずしも、チューブからという訳でなく、軟らかいフードを口に入れて食べさせたり、流動食をスポイドで飲ませたりする方法でもかまいません。それで、スムーズに給餌できるなら、わずらわしいチューブを付けられ、いたずら防止にエリザベス・カラーを装着するといった重装備にならなくて済みます。

ですが、かなり嫌がるようでは、かえって、ストレスになりますし、量的にも、さほど補給できるとは思えません。チューブからなら、まったく嫌がらず、十分な量の補給ができますし、内服薬も簡単に投薬できます。チューブが入っていても、普通に食べることもできますし、実感として、口からの栄養補給ができるのと、できないのとでは、明らかに体調維持具合が違います。

ですが、動物にとって、チューブやエリザベス・カラーをわずらわしく感じるのも、ストレスでしょう。何より、オーナーさん側が、見るに忍びないお気持ちになられるようで、チューブの装着を躊躇されるケースが多いのが実際です。チューブから流動食を注入するだけのことでも、慣れない一般の方にとっては大変なことだとも思います。

今でこそ、チューブ・フィーディング用のフードも進化して、溶けやすいもの、下痢しづらいもの、嗜好性もよいものなど、便利になりましたが、以前は、あまり良いものがなく、缶フードに水を加えたものをミキサーにかけ、カスが詰らないように、さらに茶こしで裏ごししたものを使ったりしましたので、その、工程を理解することも、慣れない方にとっては大変なことだったろうと思います。

チューブ・フィーディングといえば思い出すのが、15年ほど前、猫エイズ、猫白血病共に感染していて、リンパ腫になってしまったトラ猫のトラちゃんです。抗癌治療に耐える体力を維持するために、チューブ・フィーディングすることになりました。そこで、オーナーさんである初老のご夫婦に、その工程を伝授しなければなりません。奥様には、毎日、毎日、面会に来ていただき、少しずつ、少しずつ、説明を重ね、注入する練習をしていただきましたが、いざ、ご自宅でしてみると、それをひとりでするのは、簡単にはいかず、大変だったようです。

やむを得ず、トラちゃんは、再び、入院生活に戻り、奥様は毎日、練習通い。週末ならご主人様がご在宅で、手伝って貰えるからということで、週末は、お試し退院。それは、それは、嬉しそうなお二人。チューブ・フィーディング用具一式とトラちゃんをかかえ、「では、お借りしてまいります。」(オタクの猫ちゃんなんですけど)

そんなこんなで、奥様には大奮闘していただき、「随分、慣れまして、なんとかやっております。」と笑顔でご報告いただけるまでに。トラちゃんも、奥様の奮闘に応え、発病から半年間も頑張りました。たった、半年?と思われるかもしれませんが、猫エイズも猫白血病にも感染しているリンパ腫では、2ヶ月間頑張れれば良いほうなのです。たった半年でも、ご夫婦にとっては、トラちゃんの病気を受けとめ、共に闘い、心の準備をしながら過ごせた、貴重な半年間だったことと思います。

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2009年10月 1日 (木)

「抱っこ猫」ミューン、お母さんのいる天国へ

先日、以前、勤務していた病院の先生、スタッフから、「ミューンが亡くなりました」というメールが届きました。「ああ、そう言えば…もう、かなりのご高齢だった、ミューン…。」いつもいるはずだったのにという寂しさと、この10年間の色々なことが思い出され、切ない思いがこみあげます。

ミューンは、享年17歳。ミューンをこよなく可愛がっていらっしゃったお母さんが、入院されるということで、ホテル暮らしすることになったのが、7歳のころでした。いつも、赤ちゃんみたいに、お母さんに抱っこされ、肩越しにキョロキョロと様子をうかがっている、おとなしいニャンでした。偏食もなく、鳴くことも、咬んだり、ひっかいたりも絶対にしない優等生でした。

週末は、お母さんの一時帰宅にお供して、帰宅。「ミューンはお風呂が好きだから、お風呂に入れてあげる。」と、ニコニコ顔のお母さんに、抱っこされて、ゴロゴロとのどを鳴らしながら帰っていくミューン。そんな、ホテル暮らしがしばらく続きましたが、お母さんのご容態が、少し、思わしくないようになってからは、一緒に帰っても、世話ができないからと、ご面会に来られるだけになり、車から病院内まで歩いて来られるのも大変になられてからは、お母さんが乗っているお車まで、ミューンを抱いて連れて行ってあげて、しばし、お母さんのおヒザでご面会ということになりました。そして、それから、間もなく、お母さんは、お亡くなりになられました。

これからは、ご主人様とミューンの二人暮らしになるんだろうとばかり、思っていたのですが、「ミューンは、私のことが好きではないので…。」と、もうしばらくホテルをお願いしたいとおっしゃるご主人。確かに、男性を苦手とする猫ちゃんは多くて、一緒にお住まいのご主人でもダメという猫ちゃんもいますので、仕方のないことです。

物静かなご主人で、あまり、多くはお話しされないのですが、里親さんになっていただける方を探されたのかもしれません。ですが、7歳になる猫ちゃんですので、なかなか、難しかったのでしょうか。「どなたか、可愛がってくださる方がいたら、ご紹介ください。」そうおっしゃられ、ミューンは、そのまま、ホテル暮らしを続けることに。そして、そのまま、数年。毎月、きっちりと、お支払いにみえるご主人。この一ヶ月のミューンの様子をご報告して、「ご面会されますか?」とお聞きしても、「結構です…私のことは、あまり好きでないので…」と、遠慮されるので、こちらで、勝手にミューンを抱いて出て、お顔を見ていただくと、にっこり微笑まれ、ポンポンと、かるくミューンのおでこを撫でて、「では、よろしくお願いしまします。」と帰っていかれます。

毎日、ケージ暮らしのミューンが気の毒で、時間のある時は、入院室内を自由に歩かせてあげたり、紙くずを丸めたものを投げて遊ばせたり、ブラッシングしてあげたり、大好きな「抱っこ」をしてあげたり。それでも、このまま、ずっとケージ暮らしは可愛そう…と、スタッフの1人が、里親を申し出ました。きっと、ご主人様も喜んでくださることと、皆が思っていたのですが、意外なことに、複雑な表情をされ、「少し考えさせてください。」と。そして、「このまま、ここで、預かっていていただきたい。」と。

奥様とのつながりがなくなってしまうようで、お寂しかったんだろうか。奥様に頼まれていたミューンを手放すようで、お辛かったんだろうか。その真意は、誰も、今もわかりませんが、ミューンはずっとホテル暮らしをすることになりました。それから、10年。ご主人様は、きっちり、きっちり、お支払いにみえられ、スタッフに抱かれたミューンに、にっこり微笑まれて帰っていかれます。

ミューンが亡くなったという知らせに、すでに退職しているスタッフも、かけつけたようです。皆が、ミューンに癒してもらっていたのでしょう。ひょっとしたら、ミューンのほうでも、にぎやかな病院暮らしを、案外楽しんでくれていたのかもしれません。ご主人様も、奥様のときと同じように、スタッフに抱かれてご機嫌なミューンをみて、安心してくださっていたのかもしれません。長い長いホテル暮らしでしたが、きっと、今頃、天国で待ってらっしゃったお母さんに抱っこされて、ゴロゴロとのどを鳴らしているのではないでしょうか。そう、気持ちを慰めてみても、寂しいばかりですが、何より、ご主人様の心情をお察しすると、とても複雑な心境です。

ミューンのご冥福と、ご主人様が健やかにお暮らしいただけますよう、心よりお祈り申し上げます。

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2009年9月24日 (木)

猫の甲状腺機能亢進症

近頃、インターネットで検索したりして、情報収集できるようになり、すでに、よくご存じの方も多くなりました。甲状腺が腫瘍化して、ホルモンを多量に出す病気です。腫瘍ですが、転移したりといった悪さをすることは少なく、問題は、過剰に作られるホルモンの作用により生じるものです。

甲状腺ホルモンは、身体の代謝を活発にするホルモンですので、問題が表面化していないうちは、元気食欲が旺盛で、活発な猫ちゃんといった感じで、おおよそ、病気とは思えないものです。ホルモンバランスの崩れが支障をきたしてくると、たまに吐く、たまに下痢するなど、これといって、特徴のない症状がでることもありますが、たまに…のうちは、それほど気にとめずに済ませてしまっていることも多いと思います。

重篤な障害が生じるのは、ずっとずっと、後のことです。過剰に作られ続けたホルモンに、あらゆる臓器が、無理やり活発過ぎるほどに働かせ続けられ、あげくのはてに、ヘトヘトになってしまいます。とくに、心臓の問題が重要です。

10歳前後での発症が多いとはされていますが、早ければ5~6歳でも発症します。教科書的には、進行した甲状腺機能亢進症の猫ちゃんは、ガリガリにやせていて、眼光するどくギョロッと眼を見開いた表情をしながら、心臓はバコバコ、息づかいはフウフウと激しいイメージです。ですが、発症し始めたばかりの猫ちゃんは、案外ぽっちゃり、のんびりさんだったりもしますので、血液中のホルモン量を測ることでしか、見分けはつきません。

それに、ここのところ甲状腺機能亢進症と診断された猫ちゃん達のキャラは、あまり、教科書通りではありません。嘔吐することが多くなり、痩せてきたということで、検査した三毛猫さんは、幼少のころから、小食で、痩せていて、もの静かな猫ちゃんだったようです。実は、我が家の長老猫ゆきおくんもバッチリ(?)甲状腺機能亢進症なんですが、同じく、幼少のころから、小食でした。いつもヒトのソバでゴロゴロ、モミモミ、スリスリしてばかりいる大人しいヤツです。「まさか、うちのこに限って…。」と思わずにはいられません。必ずしも、キャラはあてにならないようです。

当院でも、中年齢以上のねこちゃんで健康診断をする場合は、甲状腺ホルモンの測定も併せて行うことを、お勧めしています。稀にではありますが、一見、全く普通で、他の検査でも異常なしの猫ちゃんで、甲状腺機能亢進症のごく初期、もしくは予備軍と診断される猫ちゃんがいます。早期に発見できれば、甲状腺ホルモンを抑えるお薬で、進行を緩和させることができます。血液を検査センターへ送るだけの検査で、猫ちゃんの負担も少ない検査ですから、理想的には5~6歳からですが、ご費用もかかることですので、誕生10周年記念には、ぜひとも検査をお勧めします。

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