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2008年11月

2008年11月21日 (金)

お若くみえますね

「○○さん、85歳!?4つ5つは、若くみえる。」以前、老人介護の仕事をしている友人から、そんなコメントを聞いて、「なんじゃそりゃ。80歳と85歳の微妙な違いはなんなんだろう。」と、思ったことがありました。

猫ちゃんも、やはり、年齢とともに風貌も、仕草、歩く様まで変わってきますから、お外で生活していた年齢不詳の猫ちゃんでも、だいたいの年齢はわかるものです。

年齢を診るポイントとしては、まず、歯です。乳歯が残っていれば、6ヶ月未満。犬歯以外のはえかわりが終わっていれば、5か月齢位。門歯だけがはえかわっているようなら、4ヶ月齢くらい。年齢がすすむほど、歯石が増えてきますので、まったく汚れのない永久歯なら、1歳~2歳まででしょう。ある程度の歯石は付いてるけど、まだ、歯肉炎をおこすまでにはいたらなければ、シニア手前。歯肉炎や歯槽膿漏があれば、シニア世代だろうと判断しますが、食べていたものにもよりますし、猫エイズウイルスや猫白血病ウイルスのような、免疫力低下をおこす病気をかかえていると、年齢のわりに歯肉炎や歯槽膿漏のひどいこともあります。

ヒトと同じで、毛づやや、皮膚の弾力感も違ってきます。若いほど、毛は艶々、皮膚のハリも良く、高齢になると、次第に、毛はゴワゴワ、皮膚もシワシワにたるんできます。もともと、猫ちゃんの皮膚は、伸びやすいのですが、若いころ太ってたお年寄り猫ちゃんなんて、ビヨーンと皮膚を両横に伸ばすと、ムササビみたいになってしまいます。

ちょっと、専門的なポイントとしては、眼です。シニア世代のなかでも、12~13歳をこえるくらいになると、虹彩の委縮や、レンズの濁りがでてきます。猫ちゃんにも、老年性白内障がありますが、肉眼で白くみえなくても、器具で眼の奥を診ると、ごく初期の白内障をおこしていることがあります。そう、お話すると、「見えなくなるのですか?」とご心配されますが、ワンちゃんでは、視力を失うケースがままありますが、猫ちゃんでは、糖尿病などに併発したケースでなければ、そこまで重症になることは、ほとんどありません。そう聞いて安心されると、一緒に眼をのぞき込んで、「ほんとだー!白いのがある。」と感心して下さいます。

なかには、年齢のわりには、歯もきれい、毛づや、皮膚のハリもよく、若々しくみえる猫ちゃんがいて、「若くみえますね。」と、思わず言ってしまうのですが、「エー!猫ちゃんでも、そんなのがあるの?」と、笑われてしまうことがあります。なるほど、以前の友人のコメントと同じく、世間的には、滑稽なコメントなんでしょう。毎日、動物と接しているうちに、年齢差の微妙な違いがわかるようになるもんなんですよね。それでも、「若くみえる」と言ってもらうのは、たとえ猫ちゃんのことでも、褒め言葉ならしく、「猫なのに、」と笑いながらも、喜んでくださいます。もちろん、「若くみえる」=「健康的」なんですし、喜ばしいことです。

先日、学会で、しばらくぶりにお会いした、大学の恩師に、「前に、○○で会ったのは、何年前?」と聞かれ「17年です。」とお答えしたら、「ゲー!!」…(ゲー!!って何よ。その分、老けたってこと?)…そんな表情をしていたんだか、「…変わらないですねェ。」と、とってつけたような、お世辞。なので、「先生こそ、お変わりないですねェ。」と、お世辞返し。

さすがに、猫ちゃんにはお世辞は言いませんので、おばあさん猫に「シワシワですねェ。」なんて、失礼なことも言ってしまいますが、それはそれでご愛敬。うちの、長老猫ゆきお君も、すっかりじーさん猫になり、ガリガリ、シワシワです。うんこをお尻にぶらさげたまま、ヨボヨボ歩いてたり。若い猫に追っかけられると、ヨタつきながら必死で逃げ、私を見上げて「ナァー!」と鳴き、「いじめられた」と訴えるかのような顔。それはそれで、やんちゃな仔猫だったころとは違ったかわいさがあるものです。

そういえば、高校卒業以来、20年ぶりの同窓会で、なかには正直、誰かわからないほどの変貌をとげていらっしゃる方もいて、会話を取り繕うのに苦心したことを思い出し、猫ちゃんって、誰かわからなくなるほどの変貌はしないなあ、なんて考えてしまいました。もともと、全身に毛がはえてて、皮膚のシワが見えないし、毛がごっそり抜けてしまうことがないからなんでしょうね。いいですねェ、猫ちゃんは。

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2008年11月13日 (木)

公園猫カンちゃん、お家のコになる

数ヶ月前、ごはんを食べなくなったといって、大慌てで来院された、カンちゃん。のどが真赤に腫れ、鼻水を垂らして、クシュンクシュン。お熱もありました。猫ちゃん同士で感染する、猫伝染性鼻気管炎、カリシウイルス感染症の典型的な症状です。

カンちゃんは、公園を住まいとしている猫ちゃん。公園には、他にも猫ちゃんが大勢いますので、どうしたって、猫ちゃん同士の病気が流行ってしまいます。カンちゃんは、他にも、耳ヒゼンダニ、ノミ、回虫と、寄生虫のオンパレードでした。

公園にいるコなので、通院は難しいでしょうし、お薬を飲ませたり、点眼したりなんて、出来ないですよねェ…。と、無理を承知でうかがってみました。「カンちゃんのためなら、通院します。お薬も、目薬もやってみます!」

「エ~。出来るかなあ。もう、警戒してしまって捕まらないんじゃないだろうか。」、そんな、私の心配をよそに、カンちゃんは新品のキャリーに入れてもらって、お母さんの自転車で通院。お家にいるコだって、キャリーに入れて来院するのに、かなり苦労されるコもいるというのに、公園のコが、そんなに簡単に捕まえられて、病院通いしてもらうなんて、ちょっとヘン。

どうやら、ずっと、毎朝、毎晩、ごはんをあげて、かわいがっていた猫ちゃんだそうです。ご主人様に喘息の持病があり、以前、ウサギさんを飼っていた頃に、救急車で運ばれたこともあるくらいなので、自宅で動物は飼えないんだとか。

毎日、ご夫婦で、カンちゃんのお薬と目薬に奮闘していただき、カンちゃんは、すっかり元気に。耳ヒゼンダニや回虫退治も済ませました。ただ、公園にいる限り、繰り返し、病気をもらってしまう危険はいっぱいです。が、ご事情がご事情ですので、いたしかたありません。

せめて、できる限りの予防をしてあげたいというご要望でしたので、月1回のノミ・耳ヒゼんダニ・回虫予防の外用薬と、5種混合ワクチンと、エイズウイルスワクチンを順次すすめていきましょうということになりました。なんとも、幸せな公園猫ちゃんです。

ところが、本日、オーナーさんだけが来院され、「相談があるんです。」、と、なんだか、困惑されているご様子。なんと、先週、カンちゃんをお家に連れて帰ったそうなんです。「日中は布団の上でゴロゴロご機嫌にしてたり、主人とじゃれて楽しそうなのに、夜になると、ひどく鳴き叫んで外に出たがるんです。家には慣れてくれないでしょうか…。」という相談。

「布団の上で、ゴロゴロしてるなら、もう慣れてるんじゃあ…。カンちゃんは、若者♂ですから、恋わずらいのお叫びでは…?去勢手術をすれば、随分、落ち着くと思いますよ。」そうお話すると、お家が嫌なわけじゃないんだと安心されたのか、パッと明るい表情になられ、「孫は4人もいるんだけど、猫ちゃんのことはわからなくて…。」(カンちゃんは、お孫さんと同等らしい…。イヤ、上なのかも。)

「カンちゃんには、大好きな♀猫ちゃんがいて、いつも、そのコばっかり、追っかけてたんです。でも、そのコは、カンちゃんのをそれ程好きじゃないらしくって、相手にしてもらえなくて…。」と、カンちゃんの恋愛事情話も披露してくださいました。

ところで、私が心配したのは、ご主人様の喘息です。「それが、お陰様で、まったく大丈夫なんです。」私は、ご主人様を診ているわけではないので、「お陰様で」とおっしゃっていただくのも変だと思いながら、とても、嬉しそうなお母さんの笑顔に、幸せな気分をいっぱいいただきました。「ホントにあのコが可愛くって、可愛くって仕方無いんです。もし、主人が、喘息発作をおこして、救急車で運ばれたって、絶対に、私はカンちゃんを手放しません!!!」

(えー!!!どうぞ、どうぞ、ご主人様の喘息発作が出ませんように。カンちゃん、去勢手術を済ませたら、もう、お外に出たがって、お母さんを困らせないでね。)

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2008年11月 6日 (木)

専門医

近年、獣医療でも、ヒトにならって、より高度な診療ができるように、ある分野を専門的に診療される先生が増えています。

ほんの20年前だと、「眼科なら○○先生」だとか、「○○先生は整形外科手術がお得意」だとか、業界では専門医的にいわれている先生方はいらっしゃいましたが、たいていは、普通の動物病院の先生をされていて、特に、その分野に力を入れられている、といったスタンスの先生がほとんどでした。

もちろん、今でも、そういった先生も多くいらっしゃいますが、本当に、その分野しか診療しない専門医の先生という先駆けは、15年ほど前に、東京で歯科を専門に診療され始めた女性獣医師ではないかと。私の記憶な中では、そう思います。病院を構えるわけではなく、依頼のあった病院へ、出張診療するかたちをとっておられました。私が、勤務していた病院にも、何度かおこしいただきましたが、咬み合わせが悪いワンちゃんの歯列矯正や口内炎が治らない猫ちゃんの全抜歯など。診療されるのをまじかで見せていただき、とても勉強になりました。

やはり、15年ほど前に、皮膚科を専門として、東京で診療を始められた先生も、当初は、出張診療の形だとお聞きしたように思うのですが、今は、病院を構えていらっしゃるようです。

私の同級生女性獣医師が、腫瘍科専門医として、出張診療を始められたのは、10数年前ですし、そのころから、ある動物病院の中でも、この先生は眼科だけ、整形外科だけ、エキゾチックアニマルだけなど、専門分野分けされているという病院のお話も耳にするようになってきました。

あまり、なじみのない分野かもしれませんが、行動学を専門にされている先生もいらっしゃいます。ヒトと暮らしていく上で、問題になる行動を治療する専門医です。多くは、ワンちゃんの咬みグセ、吠えグセ。猫ちゃんのマーキングや攻撃性の依頼もあるようです。生活している環境内での問題ですから、先生がお住まいへ伺われての診療になります。問題行動の根拠を考え、どのような訓練が適当かのご指導や、場合によっては、薬の服用も併せての治療もされるようです。

数年前から、日本では新しい専門医として、レントゲン、CT、超音波検査などの画像診断の専門医としてご活躍されている先生がいらっしゃいます。一般の病院で難解だった患者さんの紹介診療を受けていらっしゃいます。以前、超音波検査の実技指導を受けさせていただきましたが、眼からウロコがいっぱい出てしまいました。

私が大学を卒業後からの5年間、勤めさせていただいた病院の、わが師と仰ぐ院長先生は、眼科診療にたけていらっしゃって、他病院からの紹介の患者さんも、多く来院されましたが、なんと、2006年5月に、「動物病院」の看板を「動物眼科診療室」に変え、眼科しか診療しない病院にされてしまわれました。そういえば、当時、「眼科専門病院」を開きたいと、お聞きしたことを思い出しました。「そんなのありえない。」内緒ですが、実は、そう思ってました。眼科のみならず、診療全般に関しても、常に勉強熱心でおられる姿勢にも、尊敬してやまない先生でおられますが、本当に、眼科専門病院にしてしまったバイタリティーには、脱帽です。

勘の良い方は、お気付きかもしれません。「猫の診療室」なる由縁は、師匠の「動物眼科診療室」のマネっこでした。ただ、「門下生とは、認めん!」と断られては困るので、決めてしまってからの事後承諾でしたが。

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