急性アルコール中毒にご注意
とうとう12月ですねェ。クリスマス、忘年会そしてお正月。お酒の季節です。(?)
もちろんですが、動物もお酒を飲むと酔っ払います。学生時代、悪い同級生が、面白半分で、自分ちの猫ちゃんにお酒を呑ませてみたことがありましたが、眼がトロンとして、軽く千鳥足になっていました。「猫も酔っぱらう」…研究熱心な獣医大学生の研究結果です。
TV番組で、ビールをクイッと呑んで、ほろ酔い気分になってるお猿さんを見たことありますでしょうか。お猿さんくらいヒトに近いと、その様は、すっかり酔っ払いのおっさんみたいになってて、ちょっとコワいですね。
ビールを牛に呑ませると胃腸機能が良くなるし、やわらかい肉質になって良いのだと、学生の頃、誰だかに聞いたことがあります。どこかの、畜産業関係の方にお聞きしたんだか、先輩か同級生に聞いたんだか思い出せないんですが、決して、授業で習ったわけではありませんので、「正しい」ことではありません。ようは、メタボリックな牛さんになるってことですよね。私達にとっては不健康なことですが、牛さんにとっての霜降りメタボリックは、価値が上がりますから。逆に考えると、ビールをせっせと呑むということは、霜降りメタボリックを目指しているのと同じことなんですね。皆様、気を付けましょう。
ところで、ヒトではよく認知されてる急性アルコール中毒ですが、まさに、これは「急性アルコール中毒」という症例を診る機会がありました。ある日曜日の朝。ご夫婦でお連れになられたウサギさんでした。
診察台の上で、横たわったまま、全く動かないままのウサギさん。2歳という年齢にしては、ちょっと痩せています。これは、とんでもなく重篤な状態かと思われましたが、そのわりには、体温、心拍数は正常なので、不思議に感じながら、問診を始めました。
「いつから立てないんでしょう?」「今朝、気付いたら…。」「昨日までは、普通だったんですか?」「…ハイ。」「食欲もあったんですか?」「…ハイ。」「便と尿はどんな具合でしょう?」「普通にしています。」
…?…そんなに普通で、突然、こんなになってしまうって、何!?お散歩するワンちゃんなら、毒性のあるものを拾い食いしたりして、ありがちなことですが、ケージで飼われているウサギさんですし…。問診からは、察しがつかないので、血液検査をさせてもらうことにしました。かなりの、脱水症状と、肝数値に正常の5~6倍の上昇がみられます。原因は解りませんが、とにかく重症です。状況をご説明したら、なんだか、私の質問に歯切れ悪くお答されていたお父さんが、ポツリポツリと話し始めました。「…実は、昨晩、僕が日本酒を飲ませたかもしれないんです。」「かも?なんですか?」「…酔っ払って帰ってきて、…覚えてないんです。」「どのくらいの量を?」「覚えてないんで…。」(そうでした)
なるほど、謎が解けました。突然、横たわったまま、動けないほどの状態になってしまっているというのに、それほど慌てていらっしゃるふうでもなく、若干ムッとした表情で終始だんまりのお母さん。しょんぼりしてるお父さん。そして、酔っ払って、立てなくなったウサギさん。そういえば、お父さん、かなり酒臭かったです。週末だから、うんと呑んでしまったんでしょうか。接待で呑み過ぎたんでしょうか。爆睡していたところを、お母さんにたたき起こされて、しこたま叱られたに違いありません。
聞けば、日頃、水を与えていなかったとのこと。誤った言い伝えなんですが、「ウサギには水を与えてはいけない」というのを本気にして、水を与えずにいるケースがあります。草ばかり食べていれば、それほど問題なかったかもしれませんが、ペレットのラビットフードですと、かなり水分不足になっていたはずです。
夜中、ご家族に迎えてもらえず、ウサギさん相手に呑みなおしていたお父さんを想像すると、ちょっと可哀想で、「日頃、水分不足だったせいもあって、日本酒を一気に飲んでしまったんでしょうね。」と、ささやかなフォローをしてみましたが、「あなたが、治療費払ってくれるんでしょうね。」と、残念ながら、お母さんは、攻撃をゆるめませんでした。(ホントは、日本酒は甘いので、動物は好んで飲んでしまうようですが。)
幸い、入院して点滴治療を受けたウサギさんは、半日くらいたつころから少しづつ意識が戻り始め、ふらつきながらも起き上がれるようになり、翌日には、無事、退院することができました。
もちろん、退院後は水を与えていただき、ペレットだけでなく、新鮮な野菜なども与えていただけるようにしてもらったら、翌週には、驚くほど体重が増えて、すっかり元気そうなウサギさんになっていました。肝数値も正常に戻り、安心されていたお父さん。記憶がなくなるほど呑んでた、ご自分の肝数値も心配されたほうがいいかもしれません。
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