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2009年2月

2009年2月25日 (水)

腹囲膨満

メタボリック検診とやらで、健康診断に腹囲を測る項目が入ったのをご存知でしょうか。人間ドックの仕事をしている友人がいますが、今の持ち場は、その、腹囲測定係だそうで、毎日、立派なお腹を眺めているんだそうです。そして、皆は、まだまだ、序ノ口よ!と慰めて(?)くださいます。

さて、この、腹囲膨満。といっても、ただの肥り過ぎから、病的なものまで様々です。

埼玉のとある郊外にある動物病院に勤めていた時には、「先生!コイツ、また、腹んじゃってよ~!」とパンパンになったお腹を揺らしたワンちゃんが、よく、やってきたものでした。まだまだ、フィラリア症の多い地域でしたので、そのほとんどは、フィラリア症で心不全に陥り、腹水が貯まったものでした。

腹水にも、心不全によるものの他に、血液中の蛋白が少なくなる病気(肝不全や消化吸収不良、ネフローゼなど)や、大きな腫瘍や臓器の腫大による循環不全、悪性腫瘍や感染による腹膜炎など、いろんなパターンがあります。

それ以外に、猫ちゃんでは、ウイルス性の猫伝染性腹膜炎という、イヤな病気があります。腹水が、黄色味を帯びた、少し粘り気のあるものだったら、ほぼ、100%確定です。他に、発熱、肝腎障害もあれば、いよいよ、間違いなく…ということになります。現在の獣医療レベルでできることは、症状の緩和を図ってあげる対策にすぎず、この病気を克服させるすべはありません。そんな、辛いお話をしなくてはならない、イヤな病気の代表選手です。

ヒトなら、便秘になると、「お腹が張って、不快…」とお感じになるでしょうし、それは、動物も、もちろん同じなはずですが、ただ、便秘だからといって、見た目にお腹が膨満するほどのことにはならないと思います。よく、「トイレにはいって、いきんでるのに便が出ない。お腹も張ってきたし。」と来院されるケース。確かに、便秘のこともありますが、それよりは、尿がでずに、膀胱がパンパンになってしまっていることの方のほうが多いのです。そして、これは、尿毒症を起こし緊急事態になりかねません。

大型犬がお腹パンパンに…といえば、胃拡張・胃捻転症候群。これは、ほんとに、ほんとに大変です。致命的な血行障害をきたすので、緊急に胃に貯まったガスを抜き、開腹してねじれを戻さなければなりません。それでも、助けることができなかったり、なんとか手術をのりきっても、数日のうちに急変して亡くなることのある、大病です。

他に、腹囲膨満する理由として、内臓が腫瘍化したり腫れたりして大きくなっていることがあります。猫ちゃんには少ないですが、中年齢以上のワンちゃんには多い、クッシング症候群という、副腎のホルモン過多による病気がありますが、そのホルモンの影響で、肝臓が大きく腫れたり、皮膚や被毛が薄くなることや、食欲旺盛、活発なことが特徴です。元気さゆえ、病気と気付きにくいですし、「腹が出て、毛が薄くなって、食べるだけが楽しみ」なんて、まるで、どこぞのおっちゃん、おばちゃんと一緒だと、片付けられてしまいがちなんですが、実は病気だったりするんです。ワンちゃんは、中年になったからといって、腹が出てきたり、毛が薄くなったりしません…。

後になってみれば、笑い話ですが、こんな事も。飼い始めて間もないダックスの仔犬ちゃん。帰宅してみたら、お腹がパンパン、「ウンウン」苦しんでる!と、半べそかきながら、飛び込むように来院。(確かに、破裂しそうなほどにパンパン。息が荒く、立つこともできないなんて、何事!まさか、小型犬の仔犬に胃拡張・胃捻転症候群はないだろうし、何かの中毒か?)よく解らないので、とりあえずレントゲン撮影。小さな身体の真ん中に、大きな胃袋。胃内には、ドッグフードらしき粒々がぎっしり…。「食べ過ぎ?っぽいですけど…。」「いいえ!朝からは食べてないはず!」でも、どう見ても、この粒々は、食べたばかりのドッグフードっぽい、ということで、胃腸の運動を活発にする薬を注射して、いったんご帰宅いただき、ドッグフード置場を確認してもらうことに。

ほどしばらくして、「戸棚にしまってあったドッグフードを引っ張りだして、一袋まるごとたいらげてました…。大騒ぎしちゃって、お恥ずかしい…。」とご報告くださいました。いやいや、ホントはこちらも、何の緊急事態かしらと、ドキドキものでした。ただの、食べ過ぎでホット安心した事件でした。

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2009年2月13日 (金)

バレンタインデー

明日は、バレンタインデーですねェ。お菓子業界の策略が広く浸透して、バレンタインデーといえばチョコレートですが、ご存じの方もいらっしゃるかとは思いますが、動物はチョコレート中毒を起こしますので、愛しの♂ワンちゃん、猫ちゃんだからといって、チョコレートをプレゼントしないでください!

チョコレートやココアに含まれている、テオブロミンという成分やコーヒー豆に含まれているカフェインは、同じキサンチンという仲間なのですが、神経や筋肉を刺激したり、胃を荒らしたりということで、問題を起こします。知覚過敏や興奮する程度の軽症例から、けいれん発作や心肺停止をおこし死亡に至るほどの重症例もあります。

もちろん、その重症度は摂取量によりますが、犬の中毒量は体重1kg当たりテオブロミン100-200mg、平均致死量は体重1kg当たり250-500mgだそうです。そう言われても、それってどの位よ…と言いたくなりますが、たとえば、ミルクチョコレート、ダークチョコレート…等チョコレートの種類によっても、テオブロミン含有量は随分異なるので、あくまでも目安ですが、小型犬が板チョコ1枚食べたら、何かしら問題が生じるということだそうです。

なので、ペロッと一舐めしたからといって、大騒ぎする必要はないかもしれませんが、基本的に、ワンちゃんも、猫ちゃんも甘いものは大好きですので、見つけてしまったら、一舐めでは済みませんので、ちゃんと隠しておいてください。

今のところ、私が経験したチョコレート中毒の重症例は、徳用大袋のピーナッツチョコを全部食べちゃったヨークシャーテリアさんです。盗み食いに早く気付けば、胃内のものを吐き出させる処置をして、中毒を防ぐこともできるのですが、オーナーさんが気付いた時には、すでにけいれん発作を起こしており、しかも、このワンちゃんはもともとけいれん発作を持病としていたので、いつものことだと、少し様子をみられてしまったのがアンラッキーでした。

パンパンに張ったお腹、ドロドロなほどに高脂血症をおこした血液。止まらないけいれん発作。何だこりゃ…???と思案していると、いったん帰宅されたオーナーさんから電話があり、チョコレートをバカ食いしたことが判明。幸い、数日後にはすっかり回復し、しっぽフリフリ、超ご機嫌で、お母さんに「この、おバカ!」と叱られながら、元気に帰っていきました。

チョコレート中毒未遂のワンちゃんもいました。テーブルにおいてあった、チョコレートケーキを盗み食いしたと、大慌てで来院されたラブラドール・レトリバーさん。まったく、普通にご機嫌ですし、お聞きした感じでは、それほど多量には食べてなさそうで、大きなワンちゃんなので、ほんの少量なら、あえて吐き出させる必要もないかもしれないかな…などと考えはしたのですが。

やっぱり、念の為に吐き出させる処置をさせていただいたら、吐き出した量にびっくり、オーナーさんもびっくり。ほとんど、ホールケーキ1個分ほどです。どうやら、盗食を目撃した分だけじゃなかったらしい…。「○○ちゃんの分も食べてたんだ…。」と、オーナーさん。

あんなにご機嫌だったのに、吐き出したケーキを悲しそうに見つめて、トボトボ帰っていきましたが、この量は危なかったかもしれません。(吐き出させて良かった~coldsweats02)と、未遂で済んだ一件でした。

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2009年2月10日 (火)

低体温症

ヒトでも、季節の変わり目は、環境の変化に身体が反応しきれず、猛暑、極寒の季節は、身体が耐えきれず、体調を崩してしまいがちなものですが、それは、動物も同じこと。とくに、真冬には、ひどい低体温症を起こすほどに衰弱して、来院されることも多くあります。

具合が悪くて、熱発するのは、それだけ身体が活発に反応できているということ。もはや、身体が体温すら維持できなくなっているという状況は、よほどの重症ということです。

猫ちゃんには珍しいですが、ワンちゃんには多い疾患で、甲状腺機能低下症という病気があります。甲状腺ホルモンは、身体の新陳代謝を活発にするホルモンですから、このホルモン量の低下は、あらゆる身体の働きを緩慢にしてしまいます。

性格的にも穏やかになり、被毛のツヤが悪くなったり、薄くなったり、徐々に痩せてきたりします。それ程、重症にならないうちは、「年とってきたなあ。」くらいの感じなので、病的なことだとは気付かないまま、病気が進行してしまうことが多いのです。

極寒の日に、「立てなくなりました。」と、慌てて運び込まれる時には、体温は測定不能なほどの低体温、心拍数も普通の半分に減ってしまうほどの危険な状態に。緊急入院して、保温、点滴治療をスタートすると同時に、甲状腺ホルモン濃度の測定を依頼し、機能低下症があることを確認します。そして、不足している甲状腺ホルモンを薬剤で補っていくことになります。

緊急事態から脱出してめでたく退院の時には、「常に温かいところで、お世話いただくこと。」と、「ホルモン剤の投与を絶対にやめないこと。」を、ワンちゃんに代わってセツにお願いしておきます。

ガリガリに痩せ、ボソボソの被毛をして、ノソノソ、トボトボと背を丸めて歩いていたワンちゃんが、見違えるほど元気になります。オーナーさんにも、「若返った!年なんだとばかり思ってたけど、病気のせいだったんですね…。」と大喜びしていただけるので、治療しがいのある病気のひとつです。

いつも大人しかったのが、ガサガサと落ち着きなく動き回るようになって、「本当は、こんな性格だったのね。」薄かった被毛がムクムクに生えてきたりして、「本当は、こんな犬だったのね。」と、嬉しい、笑い話になります。

この病気になると、極端に新陳代謝が悪くなるのですが、そうでなくても、高齢だというだけでも、新陳代謝は低下しますし、それに、様々な機能障害が重なると、拍車をかけるように、身体の機能が損なわれてしまいます。

低体温にまで、陥ってしまっている場合は、もちろん根底にある障害や疾患の治療のうえでですが、とにかく、どんどん冷えてしまわないように保温しなければなりません。ところが、猫ちゃんの謎なんですが、どうも、勝手に冷たいところへ行ってしまいます。部屋を温かくして、ホットカーペットを入れてあげてるのに、ふと気づくと、寒ーい板の間の廊下や、お風呂場のタイルの上で、ひとり横たわっていたりするようです。

よく、昔、猫が自由に外出するのが当たり前だった頃には、猫は死に際はヒトには見せないとか、亡くなるときには、家から出ていくなどと言いましたが、具合が悪い時には、誰にもかまわれず、そっとしておいてほしいというのが、猫的なんでしょうね。

我が実家のシーズー・ミックス犬ルナちゃんも12歳になります。動物を室内に入れることを好まない父も、さすがに可哀そうに思ったらしく、冬の間は、テラスから玄関に居場所をグレードアップしてもらえたようです。でも、ホントはずっと前から、夜になると母の鏡台の下を隠れ家として、ぬくぬく眠っていることを、父には内緒なんですけど。bleah

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2009年2月 3日 (火)

開院一周年記念

Wine この、素敵なボトルは、「グスタフ・アドルフ・シュミット カッツ・QbA ブルーネコボトル」という絶対覚えられそうにない名前のドイツワインです。

一昨年前、「猫の診療室」開院時のご挨拶に、添えさせていただいたものです。「ネコ病院らしくていい」「ステキなものを、よく、ご存じで」などと、お褒めいただけたりもして、なかなかのお気に入りになっております。

ですが、実は、ワイン通でも何でもなく(こだわりなく何でもいただくヒトですhappy01)、開院準備のために、インターネットで色々と猫関連グッズを検索していて、偶然ヒットしたものなんですけど。

この2月5日で、開院一周年を迎えるということで、開院時に応援、ご協力、ご指導いいただいた方々に、一緒に乾杯していただこうと、感謝の気持ちに、お気に入りのネコボトルワインを添えて、お届することにしました。

本当に、あっという間の一年でした。けれど、今までで、最も、いろんなことを考えさせられた一年だったかもしれません。そして、とっても不思議な運命を感じる一年でもありました。

猫専門病院を開院するなど、思いもよらぬことでした。20年ほど前から、アメリカではCAT CLINICなるものが一般的になっていたようですが、私が初めて猫専門…を知ることになったのは、15年ほど前に神奈川県の先生が、2件目の病院として、猫専門病院を開院されたと聞いた時だったと思います。それが、おそらく日本で初めての猫専門病院だったのではないでしょうか。

それでも、アメリカのCAT CLINICとは意味合いが違って、2件目の病院だから、分院感覚での猫専門病院というところだったと思います。それでも、「なんてステキなんだろう。」と、驚きと憧れを感じずにはいられませんでしたが、その頃は、私もまだまだ新米獣医師でしたので、まずはオールラウンドで一人前になることを目標としていて、猫専門なんて考えも及びませんでしたし、まだまだ、時代的にも、猫専門病院が一般的になろうとは想像もつかないことでした。

ところが、獣医療の進歩と変化は目覚ましいものがあります。充実した設備を持つ、大きな動物病院が増えましたし、更なる高度医療を受ける二次診療施設も全国に数ヶ所できました。○○専門医というのも一般的になってきました。まだまだ、珍しいながらも、猫専門病院というのも、耳に入ってくるようになりました。

「私が、携わっていきたい獣医療ってなんだろう。」と模索しながら、獣医師を続ける中、なんとなく心から離れずにいて、だんだん、その思いがふくらんできたのが、「なんてステキなんだろう。」と感じた猫専門病院だったわけです。

私の中では、むしろ、それが自然な流れのことだったのですが、世の中的には、「変」な部類に入ることのようで、周りの反応ぶりには驚かされました。そんな、数々の激励、ご心配をいただいたことは、本当に嬉しく、ありがたい事です。その中でも、一番、嬉しくて、そして、奮起させられたのは、新米獣医師だった私をご指導くださった師匠先生が、少しニヤッとしながら、(こいつ、やらかしよったな!)と言わんばかりの表情でおっしゃった「へえ…。いいかもね。」

実際に「猫の診療室」がスタートしてみると、これまた、様々な反応に、驚かされたり、感心したりの連続です。「ワンちゃんに吠えられて怖がることがなくていい。」そう言っていただくと、猫専門にした甲斐があります。「間違いなく猫好きの先生に診てもらえる」的な期待で来院くださることも嬉しいことです。

ですが、思いがけないお問い合わせをいただいて困惑することもあります。「特別な薬とかあるんですよね?」「特別な治療ができるんですよね?」…それは、この世にないもの、ありえない事のレベルをおっしゃっているんだろうか…そこまで、ご期待いただくと、申し訳ない気持ちになってしまいますが、そんな、必死なお気持ちが痛く伝わります。

時に、私は猫しか診療できない獣医師だと、お思いの方がいらっしゃるので、「今までは、普通の動物病院に勤めていましたから、犬も兎やフェレット、ハムスター、小鳥さんも診療してましたよ。」と説明して、ご安心いただくつもりが、「猫専門じゃないの?」とガッカリされてしまったり。(エー。そこで、ガッカリされてしまうの?)と私もガッカリでしたが。

とにも、かくにも、猫専門病院への期待が「熱い」ことを、強く感じたこの一年。ご期待にお応えできるよう、より、いっそう、精進しなければなりません。

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