腹囲膨満
メタボリック検診とやらで、健康診断に腹囲を測る項目が入ったのをご存知でしょうか。人間ドックの仕事をしている友人がいますが、今の持ち場は、その、腹囲測定係だそうで、毎日、立派なお腹を眺めているんだそうです。そして、皆は、まだまだ、序ノ口よ!と慰めて(?)くださいます。
さて、この、腹囲膨満。といっても、ただの肥り過ぎから、病的なものまで様々です。
埼玉のとある郊外にある動物病院に勤めていた時には、「先生!コイツ、また、腹んじゃってよ~!」とパンパンになったお腹を揺らしたワンちゃんが、よく、やってきたものでした。まだまだ、フィラリア症の多い地域でしたので、そのほとんどは、フィラリア症で心不全に陥り、腹水が貯まったものでした。
腹水にも、心不全によるものの他に、血液中の蛋白が少なくなる病気(肝不全や消化吸収不良、ネフローゼなど)や、大きな腫瘍や臓器の腫大による循環不全、悪性腫瘍や感染による腹膜炎など、いろんなパターンがあります。
それ以外に、猫ちゃんでは、ウイルス性の猫伝染性腹膜炎という、イヤな病気があります。腹水が、黄色味を帯びた、少し粘り気のあるものだったら、ほぼ、100%確定です。他に、発熱、肝腎障害もあれば、いよいよ、間違いなく…ということになります。現在の獣医療レベルでできることは、症状の緩和を図ってあげる対策にすぎず、この病気を克服させるすべはありません。そんな、辛いお話をしなくてはならない、イヤな病気の代表選手です。
ヒトなら、便秘になると、「お腹が張って、不快…」とお感じになるでしょうし、それは、動物も、もちろん同じなはずですが、ただ、便秘だからといって、見た目にお腹が膨満するほどのことにはならないと思います。よく、「トイレにはいって、いきんでるのに便が出ない。お腹も張ってきたし。」と来院されるケース。確かに、便秘のこともありますが、それよりは、尿がでずに、膀胱がパンパンになってしまっていることの方のほうが多いのです。そして、これは、尿毒症を起こし緊急事態になりかねません。
大型犬がお腹パンパンに…といえば、胃拡張・胃捻転症候群。これは、ほんとに、ほんとに大変です。致命的な血行障害をきたすので、緊急に胃に貯まったガスを抜き、開腹してねじれを戻さなければなりません。それでも、助けることができなかったり、なんとか手術をのりきっても、数日のうちに急変して亡くなることのある、大病です。
他に、腹囲膨満する理由として、内臓が腫瘍化したり腫れたりして大きくなっていることがあります。猫ちゃんには少ないですが、中年齢以上のワンちゃんには多い、クッシング症候群という、副腎のホルモン過多による病気がありますが、そのホルモンの影響で、肝臓が大きく腫れたり、皮膚や被毛が薄くなることや、食欲旺盛、活発なことが特徴です。元気さゆえ、病気と気付きにくいですし、「腹が出て、毛が薄くなって、食べるだけが楽しみ」なんて、まるで、どこぞのおっちゃん、おばちゃんと一緒だと、片付けられてしまいがちなんですが、実は病気だったりするんです。ワンちゃんは、中年になったからといって、腹が出てきたり、毛が薄くなったりしません…。
後になってみれば、笑い話ですが、こんな事も。飼い始めて間もないダックスの仔犬ちゃん。帰宅してみたら、お腹がパンパン、「ウンウン」苦しんでる!と、半べそかきながら、飛び込むように来院。(確かに、破裂しそうなほどにパンパン。息が荒く、立つこともできないなんて、何事!まさか、小型犬の仔犬に胃拡張・胃捻転症候群はないだろうし、何かの中毒か?)よく解らないので、とりあえずレントゲン撮影。小さな身体の真ん中に、大きな胃袋。胃内には、ドッグフードらしき粒々がぎっしり…。「食べ過ぎ?っぽいですけど…。」「いいえ!朝からは食べてないはず!」でも、どう見ても、この粒々は、食べたばかりのドッグフードっぽい、ということで、胃腸の運動を活発にする薬を注射して、いったんご帰宅いただき、ドッグフード置場を確認してもらうことに。
ほどしばらくして、「戸棚にしまってあったドッグフードを引っ張りだして、一袋まるごとたいらげてました…。大騒ぎしちゃって、お恥ずかしい…。」とご報告くださいました。いやいや、ホントはこちらも、何の緊急事態かしらと、ドキドキものでした。ただの、食べ過ぎでホット安心した事件でした。
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