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2009年4月

2009年4月29日 (水)

豚インフルエンザ

今朝のニュースは、豚インフルエンザでもちきりでしたね。かつてに、鶏インフルエンザの事例がありましたから、「こんどは、豚か…」くらいの驚きで、鶏のときほどのショックではありませんでしたが、そのうちに、猫とか、犬とか、ヒトの暮らしに身近な動物のウイルスがヒトに感染するものに変異するという事態が起きるのではないかと、ひそかに不安はつのります。

少し前に、ペットからヒトへ感染する人畜共通感染症が、マスコミで話題にされたこともあり、とくに、妊娠中のご家族や、小さなお子様のいらっしゃるご家庭では、心配されて、ご相談を受けることもあります。

今のところ、ペットから感染する一般的なものとしては、回虫、鈎虫などの消化管内寄生虫。カビ(皮膚糸状菌症)による皮膚病。ノミや疥癬(ダニ)はヒトに寄生しませんが、咬まれると、痒くなります。猫からは、トキソプラズマ、猫引っ掻き病、クラミジア感染症など。犬からは、レプトスピラ感染症があります。

マスコミでは、公園の砂場で、猫の便から回虫に感染し、眼の奥へ迷入したせいで失明してしまったケースを取り上げていたので、非常にインパクトの強いものでした。回虫は、犬、猫に感染した場合は、消化管内に寄生しますので、下痢、嘔吐や栄養障害が主な症状ですが、本来の寄生相手ではないヒトに感染すると、免疫反応を強く受けて、他の臓器内へ隠れこもうとします。その結果、入り込んだ臓器の障害を起こしてしまうので、犬、猫に感染した場合よりも、ずっと怖いのです。

しかも、回虫は、ほとんどの外暮らしの猫ちゃんが持っていると言ってよいほどに、日常の診療で遭遇する寄生虫です。外暮らしをしていない猫ちゃんでも、胎盤や初乳を介して、母猫から感染しますので、新しく、猫ちゃんをお家に迎え入れるにあたっては、必ず便検査を済ませておく方が安心です。ですが、1回の便検査で検出されるのは、わずか40%。繰り返し、便検査をすることも大切ですが、回虫、鈎虫などのメジャーな寄生虫は、念のため駆虫してしまうほうが賢明かもしれません。外に出る猫ちゃんなら、定期駆虫がすすめられます。

トキソプラズマに感染すると、 流産をおこすということを心配されて、妊娠中は犬や猫に触ってはならないくらいの警戒をされる方もいらっしゃいますが、まず、感染源は、猫が便中に排泄するオーシストという卵のようなものです。ですので、犬からは感染しません。猫自身が、このオーシストを排泄する期間も、ごく感染初期の1週間程度ですので、永く共に暮らしている猫ちゃんから感染することはありえないのです。むしろ、感染源は、加熱不十分な豚肉などであることが多いようです。よって、新しくお家にきた猫ちゃんや、経歴の良く分からない猫ちゃんには、注意が必要だということになります。

猫引っ掻き病も、一時期マスコミに取り上げられていました。冗談みたいな名前の病気ですが、これは、冗談にならないほど、痛いのです。実は、私は感染したらしき経験者です。脇のリンパ節が5cm大にまで腫れあがりました。かなりの痛みと発熱です。思い返せば、少し前に仔猫に指の先を咬まれたことがありました。そんな、ちょっとしたキズでも感染しますし、ノミが運ぶこともあります。

レプトスピラ感染症。野外では、流行地域があり、川に住むネズミが保菌していて、犬はそのネズミの尿から感染することが多いとされています。そして、その犬の尿からヒトが感染することがありえるのです。以前、ペットのハムスターから幼稚園児が感染して、亡くなられてしまったということもありました。非常に怖い病気です。

怖い病気もありますが、適切な対処と衛生管理を心がけていれば、それ程、過剰に怖がる必要のないことばかりです。つまりのところ、消化管内寄生虫とノミなどの外部寄生虫駆除とワクチン接種をしっかりしていれば、ほとんど大丈夫なわけですから。心配のないようにして、楽しく暮らしていただきたいものです。

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2009年4月21日 (火)

復活した、ゆきお君

ゆきお君は、我が家の長老猫。18歳です。我が家の猫ですが、正式な所有権は主人にあります。主人の、独身時代からの相棒です。

ゆきお君が、何度も嘔吐し、ゲッソリ、フラフラになってしまいました。

私の愛猫ウンチ君が、リンパ腫という腫瘍の病気になったとき、あれこれと手を尽くして治療する私に、「いろいろされて、かえって可哀そう。ゆきおは病気になっても、治療しない。自然の寿命に任せる。」と、随分に私を批判した主人でしたが。

なのに、「ねえ、ゆきお君の様子がおかしい。フラフラしてる。普通じゃない。もうダメなんじゃないの。どうする?」と、大騒ぎ。

ここ数年、痩せてきましたし、腎臓や肝臓が弱ってきていました。年齢を重ねるうちに、少しずつ悪化していたのが、体調を崩したとたんに、急激な悪化をきたしてしまうことは、よくあることです。

確かに、(このままじゃ、危ないかも。)と感じるほどにフラフラです。(でも、このヒト、ゆきお君は治療しないって言ってなかったっけ。)かつて批判を受けたことを、執念深く思って、「あれ!?治療しないんじゃなかったの?」とチクリ。

ゆきお君を抱きしめて、「…点滴する…。」「最期かもしれないし。」(なんだそりゃ)と、一応言い訳付きで、治療OK。

と、飼い主様の治療OKがでた、ゆきお君。ケージ内で血管点滴を受けていても、グッタリして動くこともありません。なんとか、3日間の点滴治療で嘔吐が止まり、ケージから解放されたゆきお君ですが、よほど、具合が悪いとみえて、私達がいる部屋を出て、隣の部屋の隅の方で、寒い中、うずくまっています。

いつも、「ゆきおー!」と呼ばれると、「にゃー!」とお返事してとんでくるゆきお君。私達の周りをあっちへこっちへと、すり寄ってアピールしたり、パクッと腕を甘咬みして甘えたり。ちょっとばかし、しつこいくらいなので、思わず「うるさい、あっち行け。」なんて言ってしまってました。

なのに、暖かいところへと抱いて連れてきても、すぐに、ヨロヨロとした足取りで出て行ってしまうゆきお君を見ていると、いたたまれなくなります。もう、高齢だし、回復もここまでかなあ…と、内心、覚悟もしていましたが、治療を続けるうちに、徐々に食欲を取り戻し、時々、自分から出てくるようになり。

そして、嬉しいことに、今ではすっかり、また、甘えん坊のゆきお君に戻りました。しかも、ゆきお君にだけ特別おいしいものをあげたりしていたので、それが当然かのようにわがまま顔です。ときに、「うるさい…」と思いかけては、よくぞ復活したことに感心。また、もうしばらく、可愛いお返事を聞かせてもらえるんだから、ときに、うるさいのは、我慢、我慢。

18歳ともなると、こんな風に復活できるケースばかりではありません。重い障害や病気があるとなると難しいでしょうし、始まりは、ちょっとした体調不良でも、ドンドンこじれてしまうと取り返しがつかないほどのことになってしまいます。それでなくても、自己申告のない猫ちゃんのことですから、ヒト側で、「あれ!?調子悪いのかも。」と感じた時点で、病状はすでに進行してしまっているハズです。「ちょっと、様子をみて…。」は、禁物です。

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2009年4月10日 (金)

猫のフィラリア感染症

ここ数日、めっきり暖かくなり、桜も満開?は過ぎましたか…、すっかり春気分ですね。先日、今年初めての「蚊」を発見してしまいました。まだ、寝ぼけたように弱々しいですが、いよいよ出てきました。フィラリア予防シーズンの到来です。

日本で、猫のフィラリア予防薬が発売されたのは、約15年前と記憶しています。猫にもフィラリアが感染することは解っていながらも、まだまだ、報告も少ない時代でした。果たして、その感染率からいって、予防の必要性があるものかと、世の獣医さん達の間でも意見は様々でした。予防は不要と主張する根拠は、「だって、診たことないもの。」そう、自信満々で言ってしまえる時代でした。

「診たことない。」と誤解されていた理由としては、猫のフィラリア症は、吐く、咳、えずき等、症状があいまい。毛玉のせい?気管支炎?喘息?ということになってしまっていたのかもしれません。突然死することもありますが、まだまだ、屋内外を自由に行来して暮らす猫ちゃんが多かった時代のことです。「猫は亡くなるときは、外へ出ていく。」なんて、話で済まされてたりしたのかもしれません。

近年、報告が増えた理由としては、猫エイズや猫白血病ウイルスが広く知られるようになり、室内のみでの飼育が理想的だという認識が浸透してきたことで、より密接な暮らしになったことが、軽い症状にも気付き易くなったということもあるでしょうし、獣医さん側の認識度や検査技術の向上もあると思います。

今では、「診たことない。」ことを、自信満々におっしゃる獣医さんはおられないと思います。報告、情報が多くなり、解ってくるにつれ、「診逃している。」のかもしれないと、思わずにはいられないからです。「診たことがない。」のではなく、「診断したことがない。」というのが正しいのです。

それは、何も、診断したことのない獣医さんの技量の問題ではなく、確定的な証拠をつかむのが難しいからなのです。猫のフィラリア感染率は、犬の10~20%ですので、犬のフィラリア症を10症例診る機会があれば、猫のフィラリア症を1例は診ていたはずという計算になります。そんなに、高確率で、猫のフィラリア症を診断する機会は、まず、ありません。

本来は犬の寄生虫であるフィラリアは、猫の体内で生き残る数が少なかったり、十分成熟しないために、通常のフィラリアに反応させる試薬での検査では検出できません。検出できる可能性が高いのは、抗体検査といって、今までにフィラリアと免疫反応を起こしたことがあるかという検査ですが、これも、フィラリアが猫体内に永く寄生できず死んでしまった場合は、検出されないことがあります。それでも、猫へのダメージは1年以上にわたり残ってしまうのです。

先日、開催された猫のフィラリア症のセミナーでのお話ですが、猫の突然死の3分の1が肥大型心筋症、3分の1がフィラリア症、残りの3分の1は、脳腫瘍など他の要因なるデータがでたそうです。恐るべし、フィラリア症です。そして、症状的には、「吐く」というのに注意しなければならないとのこと。「よく吐くんですけど、大丈夫でしょうか?」「猫は吐くの普通ですよね?」本当に、よくお受けする質問です。そのうち、何%がフィラリア症なのか。そんな、データも、今後、公表されてくることでしょう。

よく、「外へは出ないから…。」「家で蚊を見たことがないから…。」ということで、予防は必要ないとお考えの方もいらっしゃいますが、データ上は、室内のみでも屋外へも出る場合でも、感染率に差は無いんだそうです。正直、そのデータには、私自身も半信半疑でしたが、ショッキングなことに、うちのにゃんのアレルギー検査をしたら、「蚊」が陽性に出たのです。私は、自宅で蚊に刺された事なんてないように思うんですが…。アレルギー検査は、今までに接触したことのないものには陽性に出ませんので、間違いなく、うちのにゃんは、蚊に刺されたことがあったのです。確かに、マンションのエントランスでは蚊に刺されたことがあります。そのまま一緒にエレベーターに乗って同伴帰宅することもあるのでしょう。自宅では、むしろ、私達ヒトよりも体温の高い猫達を好んで吸血していたから、私は自宅では蚊に刺されることがなかったのかもしれません。

フィラリア予防は、蚊に刺され始めて1ヶ月以内にスタートします。ここ1ヶ月の間に、感染してしまったかもしれないフィラリアの子虫をまとめて退治します。あらかじめ、感染しないようにする薬ではありません。ですので、「蚊がいなくなってからのもう1回」を最後にしなければ、退治されずに残った子虫が成長してしまいます。このあたりの地域ですと、4月下旬から5月上旬に開始して、12月まで予防するのが標準的です。

*お知らせ

下記の日程は、狂犬病集合注射業務にあたっておりますので、午後の診療時間を変更させていただきます。あらかじめ、ご了承のほど、お願い申し上げます。

4月6日(月)

4月11日(土)

4月17日(金)

午前診  通常通り

午後診  午後5時~7時に変更

*尚、当院は委託獣医師となっておりますので、狂犬病予防注射と登録申請等の手続きが可能です。診療の都合上、予約制となりますので、あらかじめ、ご連絡いただけますようお願いいたします。

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2009年4月 3日 (金)

狂犬病集合注射

ワンちゃんもいらっしゃる方は、ご存じだと思いますが、ワンちゃんには、狂犬病予防注射が義務付けられています。狂犬病という名前は知っていても、どこか、過去の病気のように思ってしまっていて、狂犬病予防注射なんて、接種する必要はないと思ってしまっている方もいらっしゃるかもしれません。

恐ろしいことに、ほんの一昔前、戦後間もない日本では、ヒトが狂犬病にかかった犬に襲われて感染することが頻繁にあったのです。発病すれば、ほぼ100%死亡します。狂犬病を撲滅するために、狂犬病予防法というれっきとした法律が設立されました。この法律で、狂犬病予防注射が義務付けられているのです。

狂犬病予防注射の徹底に併せて、野犬の収容や、検疫で海外からの侵入を防ぐという作戦が功を奏して、ここ数十年、日本国内での発症報告は出ておりません。ですが、世界レベルでは、むしろ、発症報告の無い国は、ほんのわずかで、多くの国で、今なお、狂犬病が流行っていることを忘れてはなりません。すぐ、お隣の韓国、中国だって狂犬病の流行地です。

少し前に、海外で犬に咬まれた方が、日本に帰国後、狂犬病を発症し、亡くなられたというニュースに、「油断しちゃいけない」ことを、再認識させられました。

もし、お隣の国から、ひそかに狂犬病に感染した犬を連れたヒトが入国してきたら…。珍獣ブームにのっかって、ひと儲けしようと、密輸した動物が、狂犬病に感染していたら…。それでなくても、日本国内には、研究用やワクチン製造用の狂犬病ウイルス自体があるわけで。通常は、外部へ漏れることのない施設内で、扱われていますが、大震災や空爆にでも遭って、施設が崩壊してしまったら…。そんな、もしかしたらに備えるには、やはり、狂犬病予防注射を徹底しておく必要があるのです。

この「狂犬病」という名前の病気ですが、犬だけの病気ではありません。ほとんど、すべての哺乳動物に感染します。アメリカでは、コウモリが運んできたり、公園に住むリスに咬まれた子供が感染することもあるようです。大陸続きの国では、キツネやタヌキが運んでしまうので、日本のような島国より、根絶するのが難しいのです。もちろん、猫にも感染します。

では、なぜ、猫には予防注射が義務付けられていないのか。日本では、狂犬病にかかった猫がヒトを襲うという事例が、無かったからのようです。アメリカなどの他国では、猫にも義務付けている国もあります。

ということで、日本では、飼育している犬を届け出て、一年毎に狂犬病予防注射を済ませなくてはなりません。一年毎に接種していれば、何月でもかまわないのですが、お役所からの案内は、3月末から4月初めに一斉に送付されます。そして、予防接種を円滑に済ませるために、4月の決められた期日、場所にて、狂犬病集合注射が開催されます。

獣医師会の仕事になりますので、私も、そのうちの3回、出動しなければなりません。この一年、ワンちゃんの診察は、実家のワンと、スタッフのワンだけだったので、久々にワンちゃんいっぱいなのは、楽しみなんですが、集合注射初体験とあって、正直、ちょっと、キンチョーです。

*お知らせ

下記の日程は、狂犬病集合注射業務にあたっておりますので、午後の診療時間を変更させていただきます。あらかじめ、ご了承のほど、お願い申し上げます。

4月6日(月)

4月11日(土)

4月17日(金)

午前診  通常通り

午後診  午後5時~7時に変更

*尚、当院は委託獣医師となっておりますので、狂犬病予防注射と登録申請等の手続きが可能です。診療の都合上、予約制となりますので、あらかじめ、ご連絡いただけますようお願いいたします。

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