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2009年7月

2009年7月24日 (金)

なんちゃって糖尿病

「なんちゃって」は、ちょっと、死語でしょうか。ですが、まさに「なんちゃって」な猫ちゃんの糖尿病に、時折、遭遇します。

ヒトでも、血糖値が高めだけど、食餌に気を付けたり、運動を心がけたりすることで、薬を使わずにコントロールできるレベルということは、よくあるようです。この場合は、「なんちゃって」というよりは、「予備軍」というかんじでしょうか。

ちょっと、猫ちゃんで事情が異なるのは、ストレスや興奮による、一過性の高血糖を起こしやすいという事です。正常な血糖値は、たとえば当院の検査器械ですと、犬75-128、猫71-148となっていますが、ほとんどのワンちゃんが正常範囲内に入るのに比べ、猫ちゃんでは約半数が正常値よりも高い結果になります。

それでも、ストレスや興奮による上昇は、200くらいまでが通常ですが、300を超えることもあります。さすがに、300超えになると、糖尿病なのかどうかの鑑別をしなければなりません。まず、尿検査で尿中に糖が出ているかを検査します。出ていなければ、糖尿病ではありません。尿中にも糖が出ている場合ですが、体調が悪いためのストレス性高血糖でも、一定レベル以上の高値が数日間続くと、尿中に糖が出ますので、別の方法での鑑別が必要になります。

2週間以上、高血糖が持続した時に上昇する、「フルクトサミン」「糖化アルブミン」というものの血液中の濃度を測定します。これが上昇していれば、糖尿病と診断することに、間違いはありませんが、では、2週間以上ストレス性高血糖が持続していたら…。実は、心臓病などの持病がひそんでいて、2週間以上前から調子が悪かった、なんてことはいくらでもありえます。

甲状腺機能亢進症など、糖尿病を悪化させる病気と重なって、重症化していることも考えなければなりません。例えば、甲状腺機能亢進症になる→糖尿病予備軍になる→やがて心臓がすごく悪くなる(ストレス!)→高血糖が続く→尿中に糖が出たせいで、尿路感染を起こす(ストレス!!)→もっと、高血糖になる→脱水症状や腎機能が悪化する(ストレス!!!)→どんどん悪くなる…。

こんなふうに、どんどん悪くなってしまった猫ちゃんでも、それぞれの治療がうまく奏すると、血糖値は普通レベルに落ち着いてしまうこともあります。「なんちゃって」糖尿病だったんですね。もちろん、高血糖になりやすいという危険体質には間違いありませんので、飲水量を測ったり、尿中の糖を試験紙でチェックしたりして、どんどん悪くならないうちに対処できるようにしておくのが賢明だとは思います。

「ほんちゃん」の糖尿病であっても、猫ちゃんの場合は、日々のストレス具合によってだけでも、血糖値の変動が激しいのが、コントロールの難しいところです。お客さんが来られた日、近所で道路工事があった日、雷が鳴った日、大好きなお母さんがお留守だった日、等々。

ある獣医科大学の付属病院で、とくに糖尿病を専門としてらっしゃる先生からお聞きしたお話ですが、「ほんちゃん」糖尿病の猫ちゃんですが、何故か、お父さんが大嫌い。毎週末、お父さんが単身赴任先から帰ってくると、一気に糖尿病が悪化して、水をガバガバ飲みはじめるんだとか。お父さんが居る週末は、入院してるほうが、随分マシならしいです。そんなに、嫌われてしまったお父さんも気の毒ですが、そんなに嫌いな理由って何なんでしょうねェ。

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2009年7月17日 (金)

猫ちゃんだって暑いんです

「ここのところ、3匹のうち、このこだけが、口を開けてハアハアするんです。心臓が悪いんでしょうか?」そんな心配をされて来院いただいた、まだ、10か月齢のスコティッシュ・フォールドの男の子。

確かに、猫ちゃんは、ワンちゃんのようにハアハアすることは、めったにありません。心臓や呼吸器の病気が心配されます。ましてや、スコティッシュ・フォールドは、肥大型心筋症の好発品種。重症の猫ちゃんでは、2~3歳やそれよりも若くして亡くなってしまうことだって、珍しくありません。

ですが、このスコさんは、つい3ヶ月前に、去勢手術にあたって、心臓の検査を受けて、全く異常なしのお墨付き。もちろん、その時異常がなくても、年齢をおうごとに進行するケースもありますから、一生大丈夫ということではありませんが、さすがに、たった3ヶ月で、全く異常なしから、ハアハアするほどの重症にまで、進行することは考えにくいです。

「じゃあ…暑いだけ?よく、エアコンの真下を陣取ってるんです。」ワンちゃんではよくある光景ですが、エアコン大好きな猫ちゃんというのも、珍しいこと。本当に、どこか悪くないかしら…と、確かに心配になります。

改めて考えてみますと、たいていの猫ちゃんは、エアコンが嫌い。我が家でも、日中、閉め切った部屋で過ごさねばならない猫様達のために、奮発して購入した省エネタイプのエアコンを、つけっ放しにしていますが、どうも、エアコンのある部屋から一番離れた、日差しが差し込む窓際が好きならしく、暑い中、デレーっと伸びてお昼寝しています。それでも、日中、閉め切っていると、息もできなくなるほど暑くなる我が家なので、結局、エアコンを付けている部屋を開け放さなければならないという、不経済な事態になっています。

「どのくらいの室温にしておけばよいの?」、「扇風機を回しておいた方がいいの?」「エアコンつけっ放しは、ちょっとキツイけど必要?」など、この時期、よくお受けするご質問です。それは、それぞれの環境によりけりでしょうが、日中、閉め切って、外出されている間は、思ってるより、室温は高くなっているかもしれません。エアコンをドライくらいでつけておけば、寒すぎず、暑すぎずで安心でしょうが、電気代を考えると強要もできないので、「ヒトが居られるくらいに。」と、お答することにしています。

ただ、ワンちゃんも一緒にお留守番される場合は、遠慮なく、エアコンを入れておくようにお勧めします。もちろん、風通しの良いお宅なら必要ないこともあるでしょうが、万が一のことがあってからでは遅いですから。毎年、お留守番してたワンちゃんが、熱中症になって運び込まれます。短頭種と呼ばれる、パグやブルドックなどの、鼻ぺちゃぶさかわいい系のワンちゃんは、とくに、鼻、ノド、気管といった呼吸器官が狭いために、「ヒトが居られるくらい」でも危険です。ペンギンか、白クマさんのお部屋並の涼しさ(寒さ?)が必要です。

夏バテ気味の猫ちゃんのために、何か、省エネの避暑対策はないかと、ちょっぴり奮発して「ひんやりマット」なるものを、購入してあげたお母さん。まあ、なかなか、こちらの意の通りにはならないもので、猫ちゃん的には、「そんな、あやしいマットの上でなんて、寝れるか!」ってかんじで、関心示さず。「ひんやりマット」は、お父さんお気に入りのお昼寝マットに。マットの上で、涼しげにご機嫌で眠る猫ちゃんを思い描いて奮発したのに、お父さんの昼寝姿じゃあ興ざめですねェ。残念。

まだ元気な猫ちゃんなら、多少の暑さで、熱中症を起こす程の事態には、ならないかもしれませんが、きっと、猫ちゃんだって、暑くてまいってるんでしょうねえ。「自分が居るときは涼しくするくせに、これは、どうゆうことやねん。」お留守番中の猫ちゃんが、悪態ついてるかもしれません。

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2009年7月 8日 (水)

猫ちゃんが、息苦しいとき

息苦しいというのは、その猫ちゃんはもちろんですが、苦しいのが手に取るようにわかるだけに、見ているご家族にとっても、苦しいことです。

息苦しい理由には、いく通りかあります。

胸水といって、肺の周りに液体が溜まっている場合。肺が膨らめないので、息を十分吸えなくなります。液体といっても、膿や血液、あるいは、癌やウイルス、細菌による炎症により浸み出た液体、血液中の蛋白量が少ないせいで浸み出た液体、血圧が高いせいで浸み出た液体と、その原因になる病気によって様々です。逆に、胸水の性状や出てきている細胞を調べることは、原因の病気を探る大きな手がかりとなります。

肺水腫もしくは、肺出血。いずれも、肺の中に液体が溜まった状態です。肺水腫の原因として、最も多いのは、心不全による肺高血圧症ですが、感電した時にも生じます。肺出血は、外傷による他、殺鼠剤などの血液がかたまらなくなる薬剤でも生じます。なので、その経緯や、心臓疾患がないか等で判断することになります。肺炎や肺腫瘍も含め、肺の換気能が悪くなるために、息苦しくなります。

逆に息が吐けなくなる病気もあります。喘息などの気管支疾患や、肺気腫といって、肺に空気だまりが出来てしまう疾患です。

気胸といって、肺の周りに空気が溜まっている状態。原因として、最も多いのは、転落事故や交通事故によるもので、肺が破れて胸腔内に空気が漏れ出る場合か、皮膚側から、胸腔へ通じる外傷により、空気が入ってしまう場合です。肺気腫も、その空気だまりが破けてしまうと、イッキに気胸を生じるとともに、その肺がまったく膨らめなくなるので、突然、致命的な呼吸困難を生じてしまうことがあります。

息苦しいといっても、これだけ様々な容態や原因がありますし、それぞれ対処方法が異なりますので、まずは、その理由を探らなければなりません。レントゲン、血液、超音波、胸水検査など、いく通りかの検査を組み合わせて、謎解きをすることになります。

ですが、本当にシビアな呼吸困難を起こしている場合は、検査される緊張にすら耐えられません。あってはならないことですが、検査途中に呼吸が止まってしまうということも、ありえることです。

息苦しさが激しいほど、「早く、対処しなければ」と、気持ちは逸りますが、教科書的には、ここで、事を急いではならないのです。「呼吸困難を起こしている動物は、いきなり検査や処置をしようとせず、まず、安静を保たせることと、十分に酸素化すること。」と、習います。興奮している動物には鎮静剤を投与して落ち着かせて、酸素室に入れてそーっと見守ります。「早く、なんとかしてよ!」腹立たしく思われるかもしれませんが、これが、正しい対処なのです。

ですが、延々、そーっと見守っていては、それ以上の処置ができません。どの時点で、検査に踏み切るか。いかに手際よく済ませるか。こんな時、獣医さんは、結構、気合を入れて勝負に出ます。

猫ちゃんは、息苦しくなるものの中でも、胸水が溜まることによる病気がとても多いのです。猫伝染性腹膜炎ウイルス感染症は猫ちゃんだけの病気ですし、膿胸や胸水が溜まるタイプのリンパ腫が、ワンちゃんより圧倒的に多いからでしょうか。そして、その量も、ワンちゃんに比べると、身体のわりに多いように思います。それだけ、猫ちゃんは重篤になるまで解りづらいのではないでしょうか。

ですので、溜まっていた胸水をお見せして、「こんなことになるまで、気づいてあげれなかったなんて。」と、ご自身を責められると、なかなか解らないものなので、そんなに思いつめないでいただきたいと、心苦しく思ってしまいます。でも、この勝負のドキドキは、結構しんどいので、せめて、検査に耐えれるうちには気づいてあげていただきたい!というところが本音なんですけど。

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