なんちゃって糖尿病
「なんちゃって」は、ちょっと、死語でしょうか。ですが、まさに「なんちゃって」な猫ちゃんの糖尿病に、時折、遭遇します。
ヒトでも、血糖値が高めだけど、食餌に気を付けたり、運動を心がけたりすることで、薬を使わずにコントロールできるレベルということは、よくあるようです。この場合は、「なんちゃって」というよりは、「予備軍」というかんじでしょうか。
ちょっと、猫ちゃんで事情が異なるのは、ストレスや興奮による、一過性の高血糖を起こしやすいという事です。正常な血糖値は、たとえば当院の検査器械ですと、犬75-128、猫71-148となっていますが、ほとんどのワンちゃんが正常範囲内に入るのに比べ、猫ちゃんでは約半数が正常値よりも高い結果になります。
それでも、ストレスや興奮による上昇は、200くらいまでが通常ですが、300を超えることもあります。さすがに、300超えになると、糖尿病なのかどうかの鑑別をしなければなりません。まず、尿検査で尿中に糖が出ているかを検査します。出ていなければ、糖尿病ではありません。尿中にも糖が出ている場合ですが、体調が悪いためのストレス性高血糖でも、一定レベル以上の高値が数日間続くと、尿中に糖が出ますので、別の方法での鑑別が必要になります。
2週間以上、高血糖が持続した時に上昇する、「フルクトサミン」「糖化アルブミン」というものの血液中の濃度を測定します。これが上昇していれば、糖尿病と診断することに、間違いはありませんが、では、2週間以上ストレス性高血糖が持続していたら…。実は、心臓病などの持病がひそんでいて、2週間以上前から調子が悪かった、なんてことはいくらでもありえます。
甲状腺機能亢進症など、糖尿病を悪化させる病気と重なって、重症化していることも考えなければなりません。例えば、甲状腺機能亢進症になる→糖尿病予備軍になる→やがて心臓がすごく悪くなる(ストレス!)→高血糖が続く→尿中に糖が出たせいで、尿路感染を起こす(ストレス!!)→もっと、高血糖になる→脱水症状や腎機能が悪化する(ストレス!!!)→どんどん悪くなる…。
こんなふうに、どんどん悪くなってしまった猫ちゃんでも、それぞれの治療がうまく奏すると、血糖値は普通レベルに落ち着いてしまうこともあります。「なんちゃって」糖尿病だったんですね。もちろん、高血糖になりやすいという危険体質には間違いありませんので、飲水量を測ったり、尿中の糖を試験紙でチェックしたりして、どんどん悪くならないうちに対処できるようにしておくのが賢明だとは思います。
「ほんちゃん」の糖尿病であっても、猫ちゃんの場合は、日々のストレス具合によってだけでも、血糖値の変動が激しいのが、コントロールの難しいところです。お客さんが来られた日、近所で道路工事があった日、雷が鳴った日、大好きなお母さんがお留守だった日、等々。
ある獣医科大学の付属病院で、とくに糖尿病を専門としてらっしゃる先生からお聞きしたお話ですが、「ほんちゃん」糖尿病の猫ちゃんですが、何故か、お父さんが大嫌い。毎週末、お父さんが単身赴任先から帰ってくると、一気に糖尿病が悪化して、水をガバガバ飲みはじめるんだとか。お父さんが居る週末は、入院してるほうが、随分マシならしいです。そんなに、嫌われてしまったお父さんも気の毒ですが、そんなに嫌いな理由って何なんでしょうねェ。
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