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2009年8月10日 (月)

のみ・ノミ・蚤!

暑くなると、増えてくるノミ。子供の頃、飼っていた犬についたノミを1匹ずつ取ってやったことがあったように思います。今思えば、全く、無駄なことです。ですが、当時は、これといった予防策も無かったのかもしれません。

私が、獣医師になったばかりの頃からしても、ノミ予防薬ほど、変化、進歩したものはないのではないでしょうか。当時は、「ノミ取り首輪」オンリーでした。殺虫剤をふくむ樹脂性の首輪で、薬剤が少しづつ被毛をつたって、体表に拡散する仕組みのものです。この薬剤とノミが接触するとノミがしんでしまうものです。効果はありましたが、大きなワンちゃんになると、首から離れたところまで薬剤が分布しづらい感がありました。そして、重大な欠点は、誤って食べてしまうと、重篤な中毒を起こすということです。首が細いこで、余りがでた分を切り取らずにダラーンとさせているのをかじってしまったり、可哀想だからとゆるめにまいていて、猿ぐつわのように、口にはまってしまうといった事件がよくありました。

その後、今、主流になっている、首の脊側に滴下するタイプのものが発売されました。皮膚から、吸収されて血液中に入り込む仕組みなので、大きなワンちゃんでも、間違いなく、十分な効果がありました。ですが、この製剤には、欠点が2点。1点は、殺虫剤なので、誤って舐めてしまうと、中毒を起こしてしまうこと。もう1点は、薬剤は、血液中に吸収されているので、ノミが吸血して初めて、その殺虫効果が発揮されるので、一度は吸血されてしまうこと。

ノミにアレルギーを持っている動物では、その一度の吸血だって、アレルギーを引き起こしてしまいます。そこで、推奨され始めたのが、「ノミ取りパウダー」や「ノミ取りムース」を全身くまなく散布して、ノミが吸血する前に退治しましょうという考え。蚊取り線香の主成分である除虫菊から作られた、多少、舐めても問題ない製剤が登場しました。

この頃、同時に推奨され始めたことが、ノミの繁殖をストップさせるということです。カーペットや畳などは、ノミにとってはとても心地よい繁殖場ですし、冬の間も、温かい室内では、一年中繁殖しつづけることになります。1匹のノミから産まれる卵の数を考えると、確かに、ノミの成虫だけを退治したところで、とうてい、ノミの繁殖には追い付きません。そこで、開発されたのが、ノミの卵や幼虫の発育を遮断する薬です。昆虫の身体をつくっている殻成分の発育を遮断する薬なので、殻を持たない動物には、全く無害ということも安心です。これが、開発された当初は、内服薬しかありませんでしたので、ノミ駆除薬と合わせて内服しなければなりませんでした。

そして、今日のノミ予防薬は、首の脊側に滴下するタイプのものが主流となっていますが、舐めても毒性のないものに変わり、皮膚から吸収するもの以外にも、皮膚表面の皮脂をつたって拡散し、全身の皮脂腺に蓄えられて叙徐に分泌されるものや、皮膚表面の細かいシワをつたって拡散し、皮膚表面に固着して、授乳中の仔猫に移行するものもあります。ノミ以外にマダニ・シラミ駆除に有効なもの、回虫・耳ヒゼンダニ駆除・フィラリア予防もできるものもあります。いずれにも、卵・幼虫の発育を遮断する薬が配合されていて、別に、内服させる必要もなくなりました。

お外に出る猫ちゃんは、絶対ですが、案外、お庭や1階のベランダからピョンッと入ってくるようなので、一戸建てや1階にお住まいの猫ちゃんも、予防しておいたほうが良いかもしれません。一度、室内で繁殖してしまうと、恐ろしいことになります。恥ずかしながら、私は、その恐ろしいことの経験者です。学生時代の夏休み、1週間ほど留守にした間、閉め切っていた室内で、あっという間にノミが繁殖してしまいました。一歩、踏み入れた足に、数匹のノミがピョンッと飛びついてきます。布団にも、ノミが繁殖してしまったのか、寝ていても、体中が痒い気がして、発狂寸前でした。そんな、経験もあって、「室内で、ノミが繁殖すると大変なんですよ!!!」と、つい、力強く語ってしまいます。

きっと、一般の方からすれば、獣医科大学の学生なら、ノミ予防のことくらい知っているはずだと思われるに違いありませんが、当時、大学で勉強していたのは、遺伝子やら、生科学やら微生物やら…日常、役立つこととはかけ離れたことばかり。ノミ駆除のことを動物病院で相談するという発想もなく、ホームセンターでみかける「ノミ取り首輪」なるものを付けてみたりして、ノミ退治に奮闘する「ど素人さん」でした。動物病院に勤務するようになり、市販のものと病院処方のものでは、明らかな効果の違いがあることを実感して、「ど素人さん」だった自分にかなりショックを受けたものです。

そういえば、学生時代、ノミが繁殖して発狂していたのは私だけではありませんでした。手足にいっぱいブツブツが出て、熱まで出て、病院へ行った友人もいました。今は、皆、第一線で活躍するベテラン獣医さんになっていますが、あの頃、身をもって学習した、「室内でノミが繁殖すると、いかに大変か」ということを、私同様、力強く語ってるにちがいありません。

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