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2009年9月

2009年9月24日 (木)

猫の甲状腺機能亢進症

近頃、インターネットで検索したりして、情報収集できるようになり、すでに、よくご存じの方も多くなりました。甲状腺が腫瘍化して、ホルモンを多量に出す病気です。腫瘍ですが、転移したりといった悪さをすることは少なく、問題は、過剰に作られるホルモンの作用により生じるものです。

甲状腺ホルモンは、身体の代謝を活発にするホルモンですので、問題が表面化していないうちは、元気食欲が旺盛で、活発な猫ちゃんといった感じで、おおよそ、病気とは思えないものです。ホルモンバランスの崩れが支障をきたしてくると、たまに吐く、たまに下痢するなど、これといって、特徴のない症状がでることもありますが、たまに…のうちは、それほど気にとめずに済ませてしまっていることも多いと思います。

重篤な障害が生じるのは、ずっとずっと、後のことです。過剰に作られ続けたホルモンに、あらゆる臓器が、無理やり活発過ぎるほどに働かせ続けられ、あげくのはてに、ヘトヘトになってしまいます。とくに、心臓の問題が重要です。

10歳前後での発症が多いとはされていますが、早ければ5~6歳でも発症します。教科書的には、進行した甲状腺機能亢進症の猫ちゃんは、ガリガリにやせていて、眼光するどくギョロッと眼を見開いた表情をしながら、心臓はバコバコ、息づかいはフウフウと激しいイメージです。ですが、発症し始めたばかりの猫ちゃんは、案外ぽっちゃり、のんびりさんだったりもしますので、血液中のホルモン量を測ることでしか、見分けはつきません。

それに、ここのところ甲状腺機能亢進症と診断された猫ちゃん達のキャラは、あまり、教科書通りではありません。嘔吐することが多くなり、痩せてきたということで、検査した三毛猫さんは、幼少のころから、小食で、痩せていて、もの静かな猫ちゃんだったようです。実は、我が家の長老猫ゆきおくんもバッチリ(?)甲状腺機能亢進症なんですが、同じく、幼少のころから、小食でした。いつもヒトのソバでゴロゴロ、モミモミ、スリスリしてばかりいる大人しいヤツです。「まさか、うちのこに限って…。」と思わずにはいられません。必ずしも、キャラはあてにならないようです。

当院でも、中年齢以上のねこちゃんで健康診断をする場合は、甲状腺ホルモンの測定も併せて行うことを、お勧めしています。稀にではありますが、一見、全く普通で、他の検査でも異常なしの猫ちゃんで、甲状腺機能亢進症のごく初期、もしくは予備軍と診断される猫ちゃんがいます。早期に発見できれば、甲状腺ホルモンを抑えるお薬で、進行を緩和させることができます。血液を検査センターへ送るだけの検査で、猫ちゃんの負担も少ない検査ですから、理想的には5~6歳からですが、ご費用もかかることですので、誕生10周年記念には、ぜひとも検査をお勧めします。

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2009年9月15日 (火)

何故かぶつかる小指

よくありますよね。出かける間際、バタバタと急いでる時に限って、家具なんかにぶつかる足の小指。「ううゥ…」と息が止まるほど痛くて、しばし、うずくまって痛みが去るのを待ちたいところだけど、急いでるから、そうもできず。誰かに、訴えたいほどに痛いんだけど、急いでるから、ただ、耐えて、心の中で「イッテェー!!」と叫ぶ。何でなんでしょうねェ。意識が、足の末端まで、及ばなくなってるんでしょうか。

全くの私事ですが、先日、出がけに、バタバタと慌ただしくしていて、机の脚に、左足の小指を激しくぶつけてしまい、それは、それは痛かったのです。出かけてからも、なかなか、ジンジンとした痛みが治まらないので、靴を脱いで見てみてびっくり。真っ青に内出血して、パンパンに腫れてるじゃあないですか。思わず、研究会でご一緒していた、親しい獣医さん達に、「見て見て~」と、訴えてしまいました。皆の一致した診断。「これは、ヒビが入ってる。レントゲン撮ってみたほうがいいんじゃない!?」

(ぶつけたくらいで、ヒビが入るほど、私の骨はヤワじゃないと思う)(仮に、ヒビが入ってたとしても、特に何かできるわけでもない)(…だから、レントゲンは撮らなくていいと思う)そんな、ポリシーをもって、レントゲン撮影せず、鎮痛消炎剤の湿布を貼ってみたりしていましたが、3日たっても、4日たっても、痛いし、腫れてるし…。(これは、普通じゃないかも)(骨がクチャッとバラけてたら、どうにかしないといけないのかも)と、だんだん不安になり、こっそり、自分でレントゲン撮影を実行。

P9110505 出来上がったレントゲンを見て、まず、驚いたのは、骨の太さ。(「太っ!」…これって、ヒトの標準な太さなんだろうか、それとも、これは骨太ってことなのかしら)…なんてことが気になったりして。当たり前ですが、日頃、診ている犬や猫の骨に比べると、あまりに太いことに、まず、ビックリです。それは、いいとして、問題の小指ですが、パキッと、骨折線が斜めに入ってました。でも、ずれたり、クチャッとはなってなかったので、ひと安心。

結局、特に何かができるわけではありませんでしたが、痛いのも仕方ないと、あきらめがつきました。ヒトの足なんて、初めて撮影しましたが、意外に、露出程度のちょうど良い、美しいポジショニングのレントゲンに仕上がったと感心したり。「これは、ヒビが入ってる。」と診断された、研究会仲間の獣医さん達も、「さすがの、すばらしい診断力。」と感心したり。

P9150527 そういえば、動物では、ここの骨を骨折することは、あまりありません。ぶつけたりしたときは、もうすこし上の足の甲にあたるところを骨折することが多いですね。動物も、急いでいて、小指をぶつけることがあるのかどうかは解りませんが、爪をひっかけてしまって、半分もげかかってるという、痛そーな怪我はよくあります。

猫ちゃんの場合は、高いところから、落ちそうになって、ガシッとつかまった時だったり、外で、敵猫に追っかけられ、超必死で逃げ帰ろうとした時だったりするようです。

ワンちゃんの場合は、お散歩中に、段差につまづいたりというのが、多いようです。ワンちゃんには、後ろ脚の内側に、狼爪(ロウソウ)という爪がぶら下がって付いていることがあります。犬種によっては、それが、1本ないしは、2本ついていることが、スタンダードだったりもしますが、ファッション的には、無い方が良いとされている犬種もあります。この、狼爪をひっかけて怪我してしまうことも多いです。地面に着かないので、伸び過ぎると、パッドに刺さってしまうこともある、厄介な爪です。

そういえば、狼爪のある猫はいないですね。イヌ科とネコ科の違いなわけですね。

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2009年9月 8日 (火)

遺伝子検査

遺伝子検査とか、DNA 鑑定とか。初めて耳にした時は、そんな事ができるようになったのかと、驚きましたが、近年では、事件などの検証には欠かせない、そして、常識なことになりました。

この遺伝子検査ですが、とうとう、獣医療の分野にも進出です。まだまだ、検査を依頼できる項目には限りがありますが、いずれも、従来は、確定診断をつけづらくて、治療方針に迷うことの多かった疾患の白黒をはっきりさせてくれるものですから、素晴らしい進歩です。

とくに、リンパ腫の診断には、大助かりです。リンパ腫は、リンパ球という白血球が腫瘍化したものですが、リンパ球は正常な体内にも存在するものですし、炎症があったり、免疫反応が活発になると、それに反応して増殖したりもします。今までは、顕微鏡でみた姿形から、悪性なのかを判断するしかありませんでした。悪性といっても、「極悪」から「やや悪」のものまで様々です。「極悪」のものは、「悪性だ」と確信を持って言えるのですが、「やや悪」のケースでは、顕微鏡をのぞき込みながら、「微妙…」と、苦しんでしまいます。腫瘍なのかどうかの判断ですから、責任重大です。自分で判断しかねる場合は、細胞診を専門にされている先生に委託して診ていただくくらいしか、手段がありませんでした。

ですが、遺伝子検査では、注射器で吸った細胞を送るだけで、腫瘍性に増殖している細胞なのかを調べてもらえるのです。ヒトの眼で診る細胞診よりも、ずっと科学的で精度の高い診断が期待できます。結果がでるのも早いので、スムーズに治療に入れるのも、ありがたいことです。ただ、特殊な検査ですので、やむを得ないことですが、費用が若干高めなのが苦しいところです。

他に遺伝子検査ができるものとしては、血液に住みついて貧血をおこす、猫のヘモバルトネラ感染症や、犬のバベシア感染症です。いずれも、従来は、血液を顕微鏡で観察して、虫体そのものがいないかを確認するしかありませんでした。ですが、虫体がくっついた赤血球は、どんどん壊れていくため、病状が進むと、見つからなくなってしまいます。そこで、他の症状や、生活環境、周囲の流行度合などを参考に、疑わしければ治療してみるというのが現状でしたので、あらぬ疑いをかけられてしまっていたケースもあったろうと思います。

猫のヘルペスウイルスやクラミジアも遺伝子検査が可能になりました。これらは、鼻炎、結膜炎をおこす感染症ですが、厄介なこととしては、生体内に潜み続けてしまうことです。鼻炎や結膜炎が繰り返し生じるケースでは、これらを隠し持っている可能性もあります。治療方針を考えたり、再発の可能性、他の猫へ感染する可能性を知っておくうえでは、重要な情報になります。

当院でも、この遺伝子検査で、リンパ腫と診断されたケースがあります。高齢の猫ちゃんで、腎機能の低下や貧血気味なこともあり、リンパ腫だからとて、抗癌治療に踏み切るのも、勇気のいることです。ですが、「ただ、悪くなるのを見守るのも心苦しいので、抗癌治療を試みよう。」と、大決断をくだされました。100%の診断があって、のうえだからこその、ご決断だと思います。腎機能障害、貧血対策をとりながらの抗癌治療チャレンジ中ですが、意外にも、体調を崩すことなく、むしろ、リンパ腫のせいだったと思われる、下痢、嘔吐がなくなり、調子は上々です。ちょっと、病院嫌いになってしまって、来院日には、気配を察すると、引き出しや靴箱に隠れてしまって、探すのに一苦労されることもあるそうですが、そんな元気も嬉しいことです。

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