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2009年12月22日 (火)

ウイルス感染症の検査ー③猫伝染性腹膜炎ウイルス感染症

本当に、イヤな病気です。予防の仕様がなく、予測の仕様がなく、治療の仕様がない感染症です。そして、診断までも、ややこしい感染症です。

この、猫伝染性腹膜炎ウイルス感染症は、免疫複合体と云って、生体に侵入してきたウイルスと、それをやっつけようとする抗体が結合したもの自体が、体中のあっちこっちで炎症を起こしてしまう病気です。その病気のあらわれ方の違いで、ウェットタイプとドライタイプという、2つのタイプがありますが、病気が発生するしくみは同じです。

ウェットタイプは、その病名の通り、腹膜炎を起こして、腹水が貯まったり、それが、胸腔で生じると、胸水が貯まるタイプです。このタイプでは、濃黄色で、少々、粘り気のある、特徴的な液体が貯まります。ですので、この様な液体が貯まっていれば、実質的には、決定付けられるということになってしまいます。

診断が難しくなりがちなのは、ドライタイプのほうです。このタイプは、身体中のあちこちで炎症が生じ、その結果、しこりを作るものもあります。腎臓にボコボコとした凹凸が出来たり、腸に塊状のしこりができたりと、手で触れば解るものなら、察しがつきやすいのですが、内臓全体に炎症を起こすものでは、侵された臓器によって、症状も様々ですので、なかなか、診断にたどりつかないこともしばしばです。

従来からされてきた検査方法は、血液中の抗体価を測る方法です。ウイルスが体内に侵入してくることで、身体の防御機構の1つとして、それをやっつけようとする抗体を作るのですが、抗体価とは、その抗体の量です。ウイルスと接触し、闘った経験値ですので、検出レベル以下なら「疑いなし」、かなりハイレベルなら「感染」、となりますが、中間レベルの場合の判断がややこしいのです。かつてに、ウイルスと接触したことがあるだけで、今は、関係ないのかもしれませんし、今、まさに、抗体産生をスタートしたばかりなのかもしれません。判断材料としては、発熱などの症状、血液中の蛋白が多くて、この病気で生じる、特徴的なバランスになっている等、他の要素を合わせて評価するか、2週間後に再度、抗体価を測定して、上昇傾向があるかの確認をします。

といった、説明するのも大変な、ややこしい話だったのですが、近頃、遺伝子検査ができるようになり、胸水、腹水中や、血液中にウイルスがいるか、いないかを調べることができるようになりました。かなり、画期的なことです。

ところが、もう一点、ややこしい問題があります。この猫腹膜炎ウイルスは、コロナウイルスという仲間のウイルスなのですが、コロナウイルスには、もう一種類、腸炎をおこすものがあって、抗体価検査にしろ、遺伝子検査にしろ、腸炎のコロナウイルスなのか、腹膜炎のコロナウイルスなのかは、区別がつきません。

ただ、腸炎のほうなら、しかるべき治療をしてあげれば、回復するのが通常ですので、コロナウイルスが(+)で、どうも、すっきりとしないとなると、猫伝染性腹膜炎ウイルス感染の疑い濃厚と考えざるを得ないのです。

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