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2010年1月

2010年1月27日 (水)

こんなもの、食べちゃった

消化管内異物による胃腸障害や、最悪、通過障害が多いのは、動物ならではのことだと思います。ヒトのお子さんでも、異物を口に入れてしまわないようにということは、よくよく注意を払うことだと思いますが、どうしたって、動物のほうが、目を離す時間が長い分と、目の届かないところへも入りこんだり、飛び乗ったりしてしまう分、危険性は倍増です。

では、どんなものを食べるのか。よく、「変なもの食べたりしませんか?」と、お聞きすると、「キャットフードしか食べません。ヒトの食べ物は、一切食べないです。」というお答えが返ってきます。「そういう、変なものではなくて、ビニールとか、紐とか、布とか、おもちゃとか…。」と、お聞きすると、「そんなもの、食べるんですか?」と、驚かれます。

実際、胃腸から手術や内視鏡で取り出した異物をご覧に入れると、「まさか、こんなものを食べてたとは…。」と、予想外のもののこともあります。疑っていたものの他にも、歴代の誤食異物が、ぞろぞろ取り出されることもあります。何故か、輪ゴム好きなワンちゃんが、輪ゴムを見つける度に飲みこんでいたらしく、そのうち、胃内に溜まってきたゴム同士が絡んで塊を作ってしまって、ある日、腸に詰ってしまった…なんて、こともありました。

どんな異物が多いのか、どんなものに、注意が必要なのか。レアものも含めると、思いもよらぬものがあるものです。私の記憶の中のデータから、思いつく限り、ご紹介してみようと思います。

理解できることとして、美味しい臭いのついたもの。食材をくるんであったラップや袋、ボンレスハムのネット丸ごとなんてのもありました。ワンちゃんは、結構、果物好きですね。切り分けて楊枝をさしてある、リンゴや柿を丸ごと(楊枝ごと)ゴクン。みたらし団子、串ごとなんてのもありました。かの、忠犬ハチ公は、焼き鳥の串が、胃にささって亡くなったと、大学時代の先生に教わりましたが、ホントでしょうか。

木の実、種も多いです。桃の種、梅干しの種、くるみ、栗、どんぐり。美味しいわけではないでしょうが、コロコロっと転がるものは、本能的に、「パクッ!」としとめてしまいたくなるのかもしれません。同じ理由でか、ボールも多いですね。

触感が好きで、かじってしまうものもあるようです。発砲スチロール、堅いスポンジ、ゴム、ビニール、布、等など、何でもござれです。大きなワンちゃんだと、石からコンクリートまで。歯がかけたって、かじりたいもんは、かじるんじゃ!の勢いです。

布素材のものでは、軍手、手袋、鉢巻、靴下、タイツ。ようは、ちょっと、そのへんに置いておいたものなんでしょう。硬貨を飲みこんでいることもありますが、たいていは、1円玉、5円玉、10円玉までで、500円玉は見たことがありません。500円玉になると、そのへんに置いておかないんでしょうね。

変りダネでは、湿布薬10枚食べてたミニチュア・ダックスがいました。「多分、昨日、湿布薬を食べたと思う。元気だけど、ご飯食べない。」と来院。レントゲンを撮ると、胃がパンパン。吐き気を出す薬を使って吐かせてみると、湿布薬が数枚出てきました。まだ、残ってるか確認するのに、再びレントゲンを撮りましたが、まだ、胃がパンパン。吐き気もなくなり、ケロッ、しっぽフリフリのダックスさん。結局、手術をして、残りの湿布薬を取り出すことになりましたが、総計10枚もの湿布薬を摘出。どうやら、たくさん食べすぎていて、吐くにも吐けなかったようです。

玄関の門にかけてある、南京錠を食べてたラブラドール・レトリバーもいました。家族の誰が紛失したのかと、言い合いをしながら、どこへやったのかと、あちこち探しても見つからないものだから、「もしや、コイツでは!?」と、レントゲンを撮りに来院。いつも通り、ご機嫌なラブラドールさん。レントゲンを撮ると、胃の中には探し物の南京錠がゴロン。「ああ…。」と落胆のご家族の横で、しっぽフリフリ。

紐状のものは、お決まり中のお決まりですが、飲んでしまっていることが、解らないままに、どんどん腸にひっかかり、くい込んでしまうと、腸が裂けてしまうという恐ろしいことにもなりかねません。おもちゃについてた紐、靴紐、エプロンの紐、縄跳び、リボン、毛糸。針山から、針付きの縫い糸を飲んでしまった猫ちゃんもいました。

たった今、飲みこんでしまったということもありました。ミシン糸の糸巻きを転がして遊んでいたチワワさん。ペロペロしたら、舌に糸がひっかかったのでしょう。糸をはずしたくて、ペロペロ、ごっくん、ペロペロ、ごっくん、すればするほど、飲み込んでしまいます。慌てて、来院されたお姉さん。左腕には、口から糸をたらしたチワワさん。そして、右手には、チワワさんとつながる糸の糸巻き。

こんなとき、引っ張ったら、出てこないかしらなんて、やってみちゃダメなんです。結局、この糸の先っぽは、すでに肛門近くまで入りこんでいました。無理に引っ張ったりしたら、腸が裂けてしまうところでした。肛門から糸が出てきたときも同じです。その糸の始まりが、舌の付け根にからんでいるなんてこともあるんです。口から肛門まで、ずーっとつながってる糸なんて、恐ろしいですね。

ともかく、異物を食べてしまう癖は、動物としては、本能的なものですから、躾でやめさせることなんてできません。一度、えらい目にあったからとて、それを学習して辞めることもありません。ヒト側で、食べてしまわないような環境にしておくほかありません。どうしたって、何かしでかすヤンチャ者は、「目が届かない時はケージ内生活」を習慣づけるのも良いと思います。もっとも、その、ケージだってかじり倒す、暴れん坊なら、動物園並みの檻が必要になるかもしれませんが。

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2010年1月19日 (火)

寒くなったら、猫の膀胱炎

「冷え」ると膀胱炎になる…というのは、どこからともなく入ってきた情報として、ご存じの方が多いと思います。もちろん、他にも、色々な要因があってのことですが、「冷え」もその要因の一つであることは間違いありません。

では、何故か。冷えると、体温が下がり、細菌にとって、心地よく、増えやすい環境になってしまいます。暑い季節に比べ、飲水量が減るので、尿が濃くなり、ため込む時間も長くなります。

寒くなったら、猫の膀胱炎。これ、動物病院業界のパターンです。「急に、グッと、冷え込んできたなあ…。」と感じるや、「トイレに何回もいくんです。」「血尿が出た。」「おしっこが出ない。」と、膀胱炎にゃんこの診察。

ヒトの膀胱炎は、圧倒的に女性に多く、細菌感染が原因のことがほとんどのようです。一方、猫の膀胱炎の原因第一位は、何といっても、膀胱結石でしょう。ヒトにも、犬にも、膀胱結石はできますが、猫の発症度の比ではありません。他の動物に比べ、非常に濃い尿を作ることが、尿中のミネラル分を結晶化させ、結石を作ってしまいやすい理由です。

猫の場合も、細菌感染が原因になることはありますし、やはり、尿道が太くて、短いメスのほうが、細菌感染を起こしやすいのは、ヒトと同じです。ですが、真に細菌感染が原因というよりは、膀胱結石による膀胱炎に、細菌感染が合併して増悪したり、腎機能の低下によって、尿が薄くなったために細菌感染を起こしてしまったなど、むしろ、はじまりの原因でないことの方が多いかもしれません。

少数派の原因としては、膀胱の形に、生まれつきの問題がある場合があります。胎仔の間、膀胱に貯まった尿は、膀胱先端からへその緒の方へつながる管から、体外へ排泄されていますが、世に生を受けるころには、その管は退化し、細い紐状になるのが、通常です。その管が完全に消退せずに、膀胱の先端から飛び出た出べそのような小袋になってしまったものを、膀胱憩室といいます。小袋の部分は、伸び縮みできないために、常に尿が貯まったままになり、炎症を起こしやすくなってしまいます。膀胱憩室は、それほど頻繁にあることではありませんが、治りにくい場合や、再発しやすい場合は、可能性を心配しなければなりません。

ヒトの場合、1週間ほど、抗生物質を内服すると、たいていは治まるようです。ですが、猫が膀胱炎で病院へ来院するタイミングというのは、ヒトよりずっと悪化してからのはずです。どんなに、注意深く、様子をご覧になっていても、排尿後にちょっと「ゾクッ」と違和感がある程度のごく初期には、わかってあげられるはずがありません。ですので、治療には、それ相当の時間がかかります。

ヒトなら、膀胱結石の対処として、水をたくさん飲んで、尿を薄め、尿量を増やすことで、結石が溶けやすく、もしくは、排出されやすくする効果があります。これは、動物も同じなのですが、たくさん飲ませるということができません。そこで、動物では、点滴をして、水分摂取量を増やす方法をとります。

動物では、結石の種類に応じた治療食が開発されていて、結石の材料になる成分の制限や、結石化しづらい尿pHに調整する効果、飲水を促す工夫がされていますので、治療食への切り替えが、治療効果、再発防止を最も期待できます。

ヒトと同じで、再発しやすい病気ですが、調子が良くなってからも、治療食を継続している場合と、そうでない場合の再発率の差は、歴然としたものがあります。ただ、好みに合わず、どうしたって、治療食は食べてくれないという困ったさんなら、水分摂取量を増やす工夫として、ドライ・フードをふやかしたり、ウェット・フードに更に水を加えるなどの工夫をしてみるのも、効果はあると思います。

逆に、禁忌なのは、ミネラル・ウォーター、ミルク、小魚など、結石の元になるミネラル成分を多く含むものです。近頃、少ないとは思いますが、井戸水も、地域によっては、ミネラル成分が多いことがあるようですので、要注意です。

「♀猫は、膀胱結石が出来にくいんですよね。」と勘違いされていることがあります。恐らく、♂では、細かい砂状の膀胱結石がペニス先端に詰ってしまい、尿が出なくなってしまう救急事態を起こしやすいので、膀胱結石は、♂に多いと勘違いされてしまうのかもしれません。♀は、尿道が太くて短いため、詰ってしまうことはマレですが、細菌感染を合併しやすいという点では、むしろ、♂よりやっかいなのです。

尿の検査内容によっては、病院で採尿する必要がありますが、自宅でとってきた尿でも、出血がないか、膀胱結石の結晶がでていないかなど、有用な情報は得られますので、頻尿や血尿を起こすほど、重症になる前に、定期的に尿検査しておくのが望ましいことです。

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2010年1月13日 (水)

新しい猫ちゃんがやってきたら

新しく、猫ちゃんを迎える。思いがけず、可愛そうで、保護してしまって。ペットショップで一目惚れして、衝動飼い。ずっと、お外でお世話してたけど、意を決して我が家へご招待。捜し求めた理想の猫ちゃんを、GET!などなど、想定してのことも、想定外なこともあるとは思います。

猫ちゃんが、ぬくぬくと、ご機嫌にしてる様子。自由気ままに、遊んでる様子。眺めているだけで、癒されます。猫ちゃん同士が仲良くしている様子は、また、格別に、幸せ気分にさせてくれるものです。新しい猫ちゃんにも、早く、お家に慣れて、楽しそうに暮らして欲しい。早く、お家の猫ちゃんと、仲良くなって欲しい。そんな、気持ちは良く解りますが、ちょっと、待ってください。猫ちゃん的にも、お互い、心の準備が必要です。そして、何より、「うつる病気」に要注意です。

「うつる病気」には、ノミ、疥癬(ヒゼンダニ)、シラミなどの外部寄生虫、回虫などの消化管内寄生虫をはじめ、真菌(カビ)の皮膚病や、ウイルスの感染症などがあります。室内を自由に走らせる前にノミ駆除しておかないと、室内に卵が落ちてしまうと、カーペットや畳、布団などで、ノミが大発生してしまうという、恐ろしいことになりかねません。

先住の猫ちゃんがいる場合は、まずは、隔離して様子をみるのが賢明です。感染症には、潜伏期間がありますので、元気そうだからといって、油断は禁物です。最低1週間は、何らかの体調不良が出ないかを観察しながら、先住猫と接触させる前に、便検査や一般的な寄生虫の駆虫を済ませておきましょう。

ですが、ここで、重大なこととして、猫白血病ウイルス感染症や、猫後天性免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)の心配です。これらの、感染症の診断は、血液検査で行いますが、ヒトのHIVと同じく、感染してから、1ヶ月しないと、(+)になりません。ですので、お家に来てから、1ヶ月経ってから検査しないと、(-)だからといって、安心できないのです。

猫白血病ウイルス感染症が(+)だった場合。免疫力が強い猫ちゃんでは、いずれ、(-)に戻ることがあります。これは、(+)になってから1ヶ月以内の感染初期だけのことで、それ以上の期間、持続的に感染してからは、(-)に戻ることはありません。まだ、(-)に戻るかもしれないタイミングならば、インターフェロンを投与して、免疫増強を後押ししてあげることができるかもしれません。もっとも、その、タイミングにいるのかは、解らないことですので、「試しにやってみる」しかないのですが。

ですので、確定的な結果は、お家に来て1ヶ月しなければ解らないのですが、お家にきてすぐにも検査しておけば、(+)だった場合に、インターフェロン投与を始める等、色々な策を講じ始めることができますので、コストは余分にかかることになるかもしれませんが、初めにも検査しておくことは、望ましいことではあります。

猫後天性免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)では、感染した(+)が(-)に戻ることはありませんが、6ヶ月齢までは、母猫からもらった移行抗体を持っているせいで(+)だったのが、6ヶ月を超えて(-)になることがありえます。ですので、6ヶ月齢未満で(+)だった場合は、移行抗体なのか、感染による抗体なのかを区別する検査を、別に行わなければなりません。

しかし、最も、厄介なのは、猫伝染性腹膜炎ウイルスです。ウイルスと接触した経験があるかを調べることはできますが、それが、発症するかどうかの予測は不可能です。しかも、発症する場合でも、数ヶ月後から数年後と、そのタイミングは、猫ちゃんの体調次第ですから、いつまで、隔離しておけば大丈夫という期限さえありません。もちろん、費用的な問題がなければ、遺伝子検査をして、(-)が確認できれば安心ですが、(+)の場合は何とも言えないということになってしまい、結局、絶対的なことが言えないということです。なので、疑わしい所見があれば、念のため、接触させないという方法以外に、感染防止策は無いのではないでしょうか。

つまるところ、新しく猫ちゃんを迎えるとき、猫白血病ウイルス感染症や猫後天性免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)の感染リスクのある環境からやってきた場合は、隔離してから1ヶ月後に感染していないことを確認するまで、接触させない。そうでない場合でも、最低1週間は隔離して、その間に、寄生虫の駆除や便検査、ワクチン接種を済ませておく…。猫ファミリーの健康のために、これだけは、守ってあげて欲しいものです。

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2010年1月 6日 (水)

ペット保険

ここ4~5年くらいの間に、急成長したもののひとつなんじゃないでしょうか。15年以上前から、あるには、ありましたが、まだまだ、世の中に浸透するには至らないものでした。

それでも、その頃から、「動物病院は、保険がきかないから高い!」という訴えは、よく、聞かされたことです。ですが、保険をかけていなければ、保険がきかないのは、当たり前なことなんですけどね。

ペットの保険もあるんですよと、お伝えすると、たいてい「家族の保険証を持ってくればいいの?」、なんて答えが返ってくるほど、ペット保険が浸透していない時代でした。あると聞いても、掛け金を払って、ペット保険に入るというのにも、抵抗のある方がほとんどでした。

日本人は、優秀な国民なゆえ、たいていの方が、義務化されているということで、高い掛け金を払って健康保険に入っていると思います。健康な方なら、自分に必要な医療費よりも、はるかに高い掛け金を支払っていることになります。これが、任意なら、確かに、ちょっと、考えてしまうところです。

私なんて、今のところ、ほとんど、病院にかかることがありませんので、掛け金を払うばかりで、ちょっと、不服感が無いわけでもありません。ですが、アメリカ在住の知人から、病院にかかって、何がし検査をして…、入院して…、で、あっという間に、30万円、40万円だという話を聞いたりすると、「何かの時のため」、というのが「保険」なんで、不服に思っちゃいけないんだ…と反省させられます。

動物の医療も高度化され、治療できるレベルも高くなりましたが、おのずと、診療費も高額になってくるわけです。そうなると、保険制度はありがたいものですが、もちろん、そんな、大病をかかえてしまうと決まっているわけでもありません。

よく、「保険に入った方がいいでしょうか?」と、相談を受けることがあります。返答に困るところなんですが、「何かの時のため」、というのが「保険」なんで、どちらが良かったかは、結果でしか解らないことです。安心料ですから、「どっちが、得か」なんて考えちゃいけないんでしょうね。掛け金が無駄になったとしても、「何か」が起こらないのが一番いいのですから。

かといって、決して、ペット保険を推奨しているわけではありません。保険をかける代わりに、積立貯金をしておくのも、賢明だと思います。生き物のことですから、突発的なことがあるかもしれませんし、若い頃は元気でも、高齢になるにつれ、何かとトラブルが起きてしまうものです。

5歳のミニチュア・ダックスを飼っているという友人に、「もうすぐ、椎間板ヘルニアになるから。」って、忠告コメントしたのが2年前。半分は、いやがらせの冗談、もう半分は、本当に多いので、覚悟を促すべく、親切心での忠告だったのですが、先日の話では、「どうやら、椎間板ヘルニアの、痛みが出て、薬で治療中だけど、手術しなきゃならないほどになったらどうしよう…。いくらくらいかかるかなあ…。」とのこと。

「そりゃあ、CT撮って、手術して、入院治療して、リハビリして…。全部でだと、20万円じゃあ絶対済まないでしょう。30万円…40万円もはかからないかなあ…。どうだろう…。もっと、かかるかなあ…。」と、少しおどしてみる私の横で、「エ~!」と絶句。実は、この日、火災保険の更新にこられた、保険代理店をされている友人なんです。「保険やさん、ペット保険入ってなかったの?」と、今のところ笑い話ですが、ホントに、手術するほどのことにならなければいいのですが。

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