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2010年8月

2010年8月31日 (火)

わんこの眼、にゃんこの眼

先日、眼科のセミナーに参加しました。毎日の診療に役立つ、最新情報満載の勉強になるお話ばかりでしたが、その中にあって、ちょっと懐かしい感動を与えてくれたお話をおひとつ。

獣医大学生泣かせであり、獣医学の面白みでもあるのが、「比較解剖学」です。動物によって、「つくり」や「しくみ」が少しずつ異なります。そこが、テストに出る「やま」(ポイント)なんですね。

例えば、私達の首元にある「鎖骨」。猫にはありますが、犬にはありません。これが無いと、肩があまり上がらないので、犬は猫ほど器用に顔を洗えないのです。招き犬もないのです。鳥にも、この鎖骨に相当する骨がありますが、「烏口骨(ウコウコツ)」と呼ばれます。

お腹の中の臓器は、ヒトと豚がよく似ています。左右1対ある腎臓は、その付き位置が多少前後するのですが、犬・猫では右側が頭側にあり、ヒト・豚では、左側が頭側です。盲腸が短めなのも、ヒトと豚の共通項です。「小袋」ってやつですね。話しは脱線しますが、獣医さん仲間の焼き肉は、解剖用語満載です。「牛の第一胃(ミノ)食べる?第二胃(ハチノス)は?第三胃(センマイ)は?」「心臓(ハツ)と肝臓(レバー)どっちがいい?」「軟骨は、鶏の肋軟骨にする?豚の気管にする?」変な集まりです。

「バカ」は「馬鹿」と書きますが、なんと馬と鹿には胆嚢がありません。獣医大生お気に入りのゴロ合わせ「バカには胆嚢が無い」となるのですが、このことを知ってて、「バカ」を「馬鹿」と書くようになったのか、ただの偶然なのか、言葉の起源に詳しい方にお聞きしてみたいものです。

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皆様も良くご存じな、動物種による眼の違いといえば、瞳孔の形ではないでしょうか。明るさによって、眼に入ってくる光の量を調節するために、虹彩という「しぼり」役が伸び縮みすることで、瞳孔の形が変わります。犬は丸い瞳孔。猫は縦長紡錘形。対して、牛・山羊・羊が横長紡錘形なのは、より広く周囲を見渡すのに都合良いからなんでしょうね。かつて、オーストラリアへ行った際、コアラの瞳孔をチェックしてみたら、横長紡錘形だったので感動してしまいました。コアラの歯がどんななのかも見てみたかったのですが、さすがに、口を触る勇気はなく、観察できずで残念でした。

02042_2 今回のセミナーで話しが出たのは、犬と猫の眼底の違いです。「目ん玉」などと言いますが、眼は本当に球形をしていて、その奥側の内張りを眼底と呼びます。特殊なレンズを使って、眼底を観察するのですが、出血や炎症、網膜はく離、視神経の異常などの有無を観察することができます。

犬と猫では、少々異なっている部分があります。血管の走り方や神経の色。あと、タペタムの大きさです。タペタムは、ヒトにはありません。動物には暗がりでの暮らし用に、少しの光でもとらえるための反射板が備わっているのです。暗闇で動物の眼に車のヘッドライトが当たるとピカッっと光るのは、この反射板があるからなのです。「鳥眼」と言うように、ヒト同様、鳥にはタペタムがありませんので、暗がりでは良く見えないのです。

このタペタムの大きさは、犬は眼底の三分の一を占めるのに対し、猫では二分の一と、大きいのです。よって、犬より、猫の方が暗がりでも良く見えるんですね。夜な夜な集会を開く猫の生活に適するようになっているようです。

日々の診療で、当たり前のように眼底を診ていますし、犬と猫でその様が異なることだって、解ってはいましたが、改めて、ひとつひとつの違いを比べてみると、何だか新鮮なウロコが眼からポロリと落ちるかのような感動でした。

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2010年8月24日 (火)

虫の居所が悪い虫太郎(チュータロー)

我が家のおっさんアメショーの虫太郎(チュータロー)くん。思えば、我が家に来たばかりの仔猫だったころ、水入れの水をかきだしてから、水入れにまたがり用をたすという…尻癖の悪い新参者でした。ですが、それほど困る間もなく、トイレで排泄するようになりましたので、すっかり忘れておりました。

この度、我が家が転居することになり、引っ越し騒動の1週間余り、病院暮らしをさせることになったのですが、それが、よほど気に入らなかったとみえます。やっちゃいました。水入れにオシッコ。トイレの砂をかくかのように、水をバシャバシャかきだしてから、オシッコ。水を入れ替えてあげると、次はウンチ。自分がビショビショにしたケージの中で、濡れるのは嫌ならしく、隅っこにチョコンと座り、恨めしそーにしています。

ご不満、お怒りはごもっとも。掃除の手間は仕方ないとして。でも、水を飲めなくなってしまうのは困ります。(器を小さくしたらしないかも。)いやいや、ヤツのテクニックが上でした。よくまあ、器用に…と感心です。(では、排泄用に空の器を置いておけば…。)空の器には排泄しないんですねえ。かたくなに水入れなんです。(水入れを2つ置いておけば…。)これは、名案かと思ったのですが、1つにオシッコ、もう1つにウンチ。うーん。なるほどー、です。

何よりの心配は、転居先の新しいトイレで排泄してくれるかということです。今までは、部屋の片隅に猫トイレエリアがありましたが、臭いや見た目対策に、ヒトのトイレを広くして、猫トイレを置けるようにしました。ですが、トイレを開け放しというのもイヤですから、ドアにペット用ドアを取り付けることにしました。

難関は、4つです。まず、スペースの問題上、少々小さめのトイレに変わりました。できるだけ砂が飛び散らないよう「おまる型」トイレになりました。砂がトイレに流せる用に変わりました。お恥ずかしいことに、猫ちゃんが気に入らないトイレの代表みたいなトイレになってしまいました。そして何よりの難関は、初体験のペットドアです。

さあて。ドキドキの猫ちゃん達の大移動。まずは、トイレに連れて行ってみました。案外、2匹共、お気に召したのか、おまるの中の砂をかいてから排泄し始めました。でも、2匹共、足がおまるの穴の中。向きも横向きだったり、後ろ向きだったり。ちょっと、間違ってますが、そんな細かいことを押し付けるのも気の毒なので、ひとまずは、トイレにしてくれたので大安心。

それでも、落ち着かない様子で、ウロウロしたり、隠れたり。そこそこ高齢の虫太郎は、随分疲れたようにみえて心配しました。それでも、でっかい頭の虫太郎は、ペットドアをズンッ!と押し開けて出入りするのも、すぐにマスターしましたし、食餌もしていましたし、最大の心配事の水入れへの排泄はしなくなりましたので、なんとか安心できるんじゃないかと思っていた矢先。

トラブル勃発です。壁を爪とぎ場にされないうちにと、購入してきた大きめサイズの段ボール製爪とぎを出したとたん、猫ちゃん達大喜び。虫太郎が早速のっかろうとしたところへ、もう1匹のお嬢猫が無理やり割り込んで横取り。爪とぎして、スリスリして、ゴロンゴロンとのっかって占領。そして、虫太郎、キレる!バクッとお嬢猫に咬みついていじめた後、水入れにオシッコ。その後、水入れにウンチ。

部屋を汚されるのはツラいので、食器をトイレへ移動。すると、今度は爪とぎにウンチ。しかも、「したったで。」みたいな感じで、そばに寄ってきてアピール。もしくは、バリバリって爪とぎの音で、私を振り向かせてから、ウンチポーズ。(やばいっ!)と虫太郎を抱えてトイレに走ったら、廊下の途中でウンチがポトン…。しかも、ゆるゆるウンチ。(最悪…。)それは、虫太郎のセリフかもしれませんが…。

そこそこご高齢な虫太郎の体調を案じて、点滴・注射処置をほどこして差し上げましたが、それがまた、彼のお気に召さなかったらしく、「フッガー!」とふきまくり、ヒトも猫も寄せ付けなくなり、靴箱の下にもぐりこんで険しい顔。「ちゅうたろー♡」→「フッガー!」と、ご機嫌とりは、かえって怒り倍増のようなので、そのまま放置することに。

点滴効果か、翌日には、毛艶良く、若返ったかんじの虫太郎くん。便もややゆるウンチ程度に回復。一晩、放置され、寂しくなったのか、自分からスリスリスリと寄ってきてゴロゴロ。なんとか、ご機嫌も回復傾向、今のところトイレをお使いいただいてますが、爪とぎ事件の一件来、ごはんをあげる時にも、お嬢猫が我先にと食べようとするのをガードして、虫太郎様最優先です。

今までいた猫ちゃん達は、お引っ越し慣れしてたので、手こずることもありませんでしたが、そういえば、今回の2匹にとっては、初めてのお引っ越しでした。意外と虫太郎くんたら、ナーバスなおっさん猫だったんですねえ。ハラハラ、ドキドキのお引越し大騒動でした。

やっと、落ち着いてきた新居暮らし。虫太郎は、キッチンマットをお気に入りの寝床にして丸まって眠り、お嬢猫は、おNEWのソファーで仰向け大の字で眠っています。どうやら、なんとか、虫太郎の水入れで排泄のいやがらせも終息したようです。

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2010年8月17日 (火)

流涙症

先日、参加した眼科セミナーによると、流涙症とは、「涙液が何らかの影響により、正常な排出ルートを通らず、表皮にあふれ出た結果、眼周囲の皮膚および被毛が涙液により濡れてしまうため、皮膚炎や感染症を起こしやすい状態。」だそうです。

この「流涙症」は、私の師匠先生が手がけていた研究テーマであったこともあり、思い入れのある病症のひとつです。師匠先生は、なぜ、流涙症が生じるのかについて、涙の分泌量、涙の質、角膜の状態、眼の形、まぶたの問題、眼の周りの被毛の影響など、いろんな方向から原因追究され、解決方法を生みだしてこられました。

流涙症の原因を大きく分類すると、①まつげの異常、②まぶたの異常、③涙の異常、④涙点・鼻涙管の異常、になります。

①まつけの異常は、俗にいう「逆さまつげ」です。眼に当たる方向に生えたまつ毛の刺激で、涙が多くなるケースです。重症なケースでは、まつげを永久脱毛したり、手術で毛根から切除してしまうこともあります。

②まぶたの異常は、まぶたが内側にめくれ込んでいたり、鼻の両側のシワが深くて、眼に当たってしまうような問題で、ブルドックのようなブチャ顔系で生じやすいものです。猫ちゃんでは、ペルシャ猫で遺伝的に多い問題です。やはり、重症なケースでは、眼をパッチリさせたり、シワを切除する手術が望ましいのですが、シワのないブルドックってのも…オーナーさん的には、究極の選択でしょうね。

③涙は、眼の表面を覆い、細かなゴミや雑菌などを洗い流したり、常にうるおいを保ちながら、角膜に栄養を運ぶ働きをしてくれています。実は、涙は3層に分かれていて、角膜側から眼に涙をとどめるためのムチン層、本来の涙である水層、乾燥を防ぐための油層となっています。ムチン層が不足すると、涙はとどまらずに流れ落ちてしまいますし、油層が不足すると、容易に蒸発してしまい、涙の分泌量は十分であってもドライアイとなって、角膜にダメージが生じやすくなります。すると、痛みから涙が増えて流涙症になる…と、そんなこともあるのです。

④涙点・鼻涙管とは、眼頭の上下に開いた小さな穴が涙点で、ここから鼻腔やノドの方へつながる管が鼻涙点です。涙点は涙の排水口、鼻涙管は涙の排泄管です。ですので、この排泄ルートがダメとなると、涙はあふれるしかなくなり、見ため上「涙が多い」となってしまうのです。生まれつき、穴が小さかったり、無かったりする場合や、長く結膜炎を患ったせいで、癒着してふさがってしまうこともあります。猫では、若齢期にヘルペスウイルス感染症による結膜炎から涙点閉塞をおこすことがほとんどです。ふさがった涙点を切開して開通させたり、目詰まりした鼻涙管を洗浄することで解決することもありますが、癒着が激しく、再開通は望めないこともあります。

こんなそんなで、一言で「涙焼け」といっても、原因は多種多様なわけで。中には、ちょっとついでな感じで、「あっ。そういえば、先生。このこ、涙が多いのよね。」って、投げかけられた問いに、獣医さんサイドとしては、これら①~④の原因らしきがないかと、かなり真剣に目ん玉見開いて、目ん玉を診るわけです。

涙焼けは、せっかくのかわいいお顔が汚れてしまうことも残念なことですが、眼頭の皮膚がただれたり、結膜炎を引き起こすようなトラブルメーカーにもなってしまいます。完治が難しいケースも多いのですが、症状を軽減させる対策をとってあげて、極力、トラブルが生じないようにしてあげたいものです。

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