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2011年4月

2011年4月28日 (木)

GW中の診療について

GW中も通常通りです。

日・祝日は休診日となりますが、

4月30日(土)、5月2日(月)は、午前、午後共診療しております。

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2011年4月22日 (金)

麻酔のリスク・・・意外と怖い「肥満」

全身麻酔のリスク。どんなに健康な動物でも、ゼロではありませんが、状態が悪いほど、リスクは高くなります。そして、重要なのは、どのくらい状態が悪く、どのくらいのリスクなのかです。それによって、必要な対処や注意事項が変わってきますし、全身麻酔に先だって、オーナーさんに説明する内容も変わってきます。

動物病院スタッフがチームとして、全身麻酔を伴う診療を行うにあたっては、それぞれの動物の麻酔リスクについて、共通の認識を持っていなければなりません。そこで、麻酔リスク分類という方法をとります。リスクを5段階評価して分類する方法です。

【クラス1】最も、リスクの低いレベルです。あるデータでは死亡率0.1%。健康な状態で、手術内容も、全身的な問題を引き起こさないであろう場合です。若い動物の避妊・去勢手術がこれにあたります。避妊・去勢手術だって、100%安全ではなく、わずかながらのリスクはあるのです。

【クラス2】ちょっと問題あり。あるデータでは死亡率3%。けど、何とか頑張れるであろうレベルです。一見、健康でも、老齢動物、新生仔、妊娠動物であるというだけで、クラス2になります。軽い貧血や骨折、症状のない心臓病を持つ動物。腹水や腹腔内に大きな腫瘍や多量の脂肪があるなど、呼吸を圧迫する要因がある動物も含まれます。ブルドッグやパグなどの短頭種は鼻、ノド、気管などの呼吸器系が狭くて換気不足になりやすいので、全く健康でもこのクラスです。同じく、肥満動物もノドや胸や腹の贅肉が呼吸の妨げになりますので、このクラスに入ります。

【クラス3】問題あり。あるデータでは、死亡率30%。例えば、腸に異物が詰まって、激しい嘔吐をしているとか、事故に遭って複雑骨折している、子宮に膿がたまっている、消化器に腫瘍ができているなど。どんな原因であれ、発熱や脱水、貧血があるものも含まれます。超高齢動物も、このクラスです。

【クラス4】かなり問題あり。あるデータでは、死亡率70%。命にかかわる病気があって、手術したからといって、治るとは限らないようなケース。重度の肝臓、腎臓、心臓障害がある動物。重度の脱水、貧血、衰弱、肺疾患がある動物などです。そして、恐ろしいことに、病的肥満はこのクラスに入ります。

【クラス5】瀕死の状態。あるデータでは、死亡率100%。助かる可能性は低いけど、手術するしかない状態です。

驚くことに、恐ろしいことに、病的肥満は、瀕死の状態と1ランクしか変わらないほど、麻酔リスクが高いのです。肥満が呼吸の妨げになることは、前述の通り。加えて、麻酔薬を投与した際、まず、大量の脂肪に行き渡ろうとするため、効いてほしい脳に届かないということが起こります。ですので、効かせるためには、麻酔薬の量を大幅に増やさなければなりません。ところが、脂肪に蓄積された麻酔薬は、排泄されるのに時間がかかるため、長時間、麻酔薬を抱え込んでしまうことになるのです。心臓や呼吸や、生命反応を弱める麻酔薬の影響を、通常よりも強く、長く受けるのですから、身体が耐えきれなければ、「死」に直結なのです。

肥満は、肝臓、心臓、関節の問題を起こすことや、猫ちゃんでは、糖尿病の大きな要因になっていることなど、良く、ご周知でいらっしゃると思います。ですがそれ以外にも、常に呼吸困難状態あり、常に酸素不足だということは、全身麻酔中という訳でなくとも、全身あらゆるところにとって、負担なわけです。そして、万が一、全身麻酔が必要な事態になったら、命キワキワの覚悟で処置を受けなければならなくなります。

ちょっと、ドキっとする話ですよね。「では、病的肥満って…。どのくらいから?」なんでしょうか。「肥満」の定義は、理想体重を15~20%超えたたレベル、そして、「病的肥満」は理想体重を30%超えたレベルとされています。つまり、5kgが理想体重の猫ちゃんが、5.75~6kgになると肥満猫、6.5kgで病的肥満猫なんです。

ますます、ドキッとしますよね。「じゃあっ!!うちのこの理想体重は何kg!?」となりますが、厳密に決めるのは難しいです。身体を触って、筋肉や皮下脂肪の付き方の体格チェックを目安にするのが一番良いと思います。ボディ・コンディション・スコアという基準がありますので、ご参考までに。

「え!?こんなに細いのが、普通なの!?」と、絶句される方が大勢いらっしゃるのではないでしょうか。

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2011年4月14日 (木)

尿検査の薦め

このところ、急に温かくなり、当院でも蚊をみかけるようになってきました。ので、随時、フィラリア予防開始のご案内を差し上げています。

フィラリア予防薬は、蚊によって運び込まれたフィラリア子虫が、皮膚の下や筋肉内にいるうちに駆除して、循環血液中へ入り込むのを阻止して、感染を予防する薬です。ですので、蚊が出始める前から投薬する必要はありませんが、動物の体内に運びこまれてから1ヶ月以上経って、血液中に入ってしまうと、駆除できなくなります。ですので、蚊が出始めて、1ヶ月以内には予防を開始しなければなりません。

ワンちゃんは、フィラリア予防を開始する際に、血液で感染していないかの確認検査が必要です。感染してしまっているワンちゃんに、予防薬を投与すると、フィラリア子虫が一気に死滅することにより、アナフィラキシー・ショックを起こすことがあるからです。

猫は、フィラリアにとって、本来の寄生相手ではありませんので、猫の体内で成虫まで育つことは、ごくごく稀です。それに、猫の小さな心臓では、1匹でも成虫が入りこむと、突然死もありうるというのに、♂♀両方が猫の心臓内で暮らし、子虫を産んでいるということは、更に、更に、稀な…というよりは、ほぼ、ありえないことですので、検査をする必要性は限りなくゼロに近いということになります。

なので、ワンちゃんのように、一度は病院へ行かねばならないといった大変さが無くて良いのですが、これも良し悪しで、ついでに健康診断的な血液検査をする機会がもてるワンちゃんにくらべ、猫ちゃんは健康診断を怠りがちです。

さらに、ワンちゃんにくらべ、病気や老化現象の進行に気付きにくいことが多いのです。具合が悪くなった老齢の猫ちゃんと来院されたオーナーさんの弁として、よく耳にするセリフ。「このこは今まで、全く、病気をしたことなくきたんです。」ですが、そんな、猫ちゃんは、たいてい、かなりの重症さんです。猫ちゃんの代弁として、手厳しい指摘をさせていただくとすれば、「私は、今まで、全く、病気に気付かずにきたんです。」が正しいと思われます。

決まった時間に、決まった量を食べる習慣付けがしやすいワンちゃんでは、食欲不振にすぐ気付くことが出来ますが、一日中ダラダラ食いだったり、複数頭の猫ちゃんにドンと山盛りごはん式になってしまうと、わずかな食欲低下には気付きようがありません。おそらく、ほとんど口をつけないほどの食欲不振になってからか、毎日、見ていても痩せたと気付くほど痩せこけてからの発見になってしまいます。

とくに、複数頭飼いでは、嘔吐物や下痢便があっても、誰のものかの実証が難しかったり、固まる砂を使用していると、尿の色や量の把握も不十分になってしまいます。お散歩に出かけるワンちゃんなら、運動したときの元気さ加減も解りやすいですが、気ままに暮らす猫ちゃんは、疲れやすくなっていることに気付かないまま、「しんどそう?」と感じた時には、かなりの重症さんになってしまっているのです。

そんな、猫ちゃんの健康状態を把握するのに、最も、お手軽かつ重宝するのは、体重測定と尿検査です。尿検査は、意外とたくさんの情報が得られます。若い猫ちゃん、高齢の猫ちゃんそれぞれで、メリットがあります。

若くて元気盛りの猫ちゃんにも多いのが、膀胱炎です。しかも、膀胱炎の原因として多い尿石症は、腎機能が低下して尿が薄くなった老齢猫ちゃんよりも、濃い尿をする若い猫ちゃんのほうが生じやすいのです。尿結石が詰まって、尿が出ない緊急事態に陥ったり、真っ赤な血尿をするほどに重症化する前に、治療を始めてあげることができれば、回復も早く、再発も起こりにくくて済むでしょう。

老齢になった猫ちゃんに生じる障害として、最も多いのが腎臓の機能低下です。その、指標となるものは多々あります。刻々と変化するのは、腎臓の大きさや内部構造の変化でしょうか。レントゲンや超音波検査でモニターすれば、少しずつの変化が確認されることでしょう。ですが、病的なレベルに来ているかどうかの判断としては、血液検査と尿検査のほうが優れています。

それぞれ評価するものは異なり、血液検査では、腎臓の排泄能が低下して、体内に滞りがちになっている老廃物の量を指標にしますが、尿検査では、尿の濃さ(比重)を指標にします。本来は、老廃物を排泄するのに、余分に水分が出てしまわないように、濃縮した尿を作るものですが、この機能が低下してくると、尿は薄くなり、おのずと量が増えます。

血液検査データは正常値でも、尿の濃さは薄くなり始めていることもあります。もちろん、その逆もありますし、両方とも正常でも、腎結石や腎嚢胞などの腎疾患が隠れていることもありますから、本来は血液検査や画像検査を含め総合的な評価をするのが望ましいのです。ですが、尿検査は、唯一、猫ちゃん同伴なしでできる検査で、かつ、比較的費用も安価ですし、多くの情報が得られる検査ですから、マメにチェックするには持ってこいの検査です。

尿比重(濃さ)の低下が腎機能の評価になるだけでなく、蛋白が多く出る腎臓疾患もありますし、ブドウ糖が出ていれば、糖尿病の疑い、大いにありです。ビリルビンが出ていれば、肝臓機能障害もしくは溶血(血が壊れる)性疾患を疑わなければなりません。もちろん、膀胱炎や尿結石についても調べることができます。

よく、お受けする質問は、「どうやって、尿を採るの?」です。1つは、尿をしようとしゃがんだ瞬間に、紙皿やトレイのようなもので受けてもらう方法です。ただ、猫ちゃん的には、トイレについて来られて、じっと見られて、しゃがんだお尻の下に、何かつっこまれたら…。落ち着かないですよね。排尿をやめてしまうこと、多々ありです。

Photo_3  病院では、食器を洗い上げるのに使う水切りかごをトイレとして使用しています。排泄物に砂をかけて隠す習性を満足させてあげるために、広告紙を短冊状に切ったものを入れておくと、たいていの猫ちゃんは、用をたしてくれます。これだと、尿の色や量が解りやすいですし、採尿も簡単です。お家のトイレでも、砂を入れずに広告紙を敷いておくなどして、所定の場所に置いておけば、案外、砂にはこだわらずに排尿するようです。このほうが、猫ちゃんの警戒心を挑発せずに採尿できると思います。

細菌培養の検査など、検査の内容によっては、病院で採尿し直さなければならないこともありますが、第一段階の検査は、ご自宅で採尿していただいた尿でも問題ありません。当院で診察歴のない猫ちゃんでも、尿検査だけお受けすることもできますので、お気軽にご持参ください。

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2011年4月 7日 (木)

高齢動物の麻酔

「もう、歳だから…。」

高齢動物が、全身麻酔をしての手術や処置が必要になった時、GOなのかSTOPなのかを悩んで、STOPを選ぶときの理由は、なんとなくコレです。なんとなく、高齢なゆえの衰えは、麻酔リスクになるのであろうことは、ご理解いただけているのだと思います。

麻酔薬は、脳をマヒさせる薬です。で、意識や、感覚がなくなるのです。どんなに医学が進歩しても、薬の開発が進んでも、安全な麻酔なんてありません。脳がマヒするのですから…。心臓の動きや呼吸を弱めてしまいます。血液のめぐりが悪くなり、酸欠になった身体中で、緊急事態大発生の状況になります。

ですが、生き物の身体には素晴らしい機能が備わっていて、状況を元に戻すための反応が次々と働いて、平常を保とうとします。もっとも、健常であれば…の話です。

では、高齢になると、何がどうなるのか。ひとつ、ひとつ挙げてみると、様々なリスクがあるものです。

まず、若い頃に比べて、身体の筋肉が減ってきます。(耳の痛い話です。)そうすると、麻酔薬を投与した際に、薬が分布するところが減る分、脳にまわる薬の量が増えてしまいますので、効きすぎたり、脳からの排泄に時間がかかり、覚めにくくなってしまいます。

そして、筋肉が減る代わりに、脂肪割合が増えます。(ますます、耳の痛い話です。)すると、脂溶性の麻酔薬は、初めは身体にまわりすぎて脳に効きにくく、その後、身体に残りすぎて麻酔薬の作用が強く出すぎたり、覚めづらくなるという問題をおこします。

体内の水分が減ります。(水分不足は肌だけではありません。)たくわえが無い分、軽い脱水症状にも耐えられず、麻酔時の血圧低下に耐えにくくなります。

心臓や血管も衰えます。筋肉の弾性、伸縮性が悪くなると、血液を押し出し、循環させる仕事力が低下します。さらに、弁膜症などの心臓病を患う動物もいます。

同じように肺も伸縮性が悪くなりますし、息を吸い込むのに、胸を膨らます筋力も衰えるので、呼吸力も低下します。

肝臓や腎臓の機能が低下しているので、麻酔薬の分解、排泄に時間がかかります。その他、内分泌関係が代謝低下傾向なのも、状態を落ち込みやすくさせてしまいます。

脳も、老化に伴い縮みます。(ぞっとする話ですが…。)活動できている細胞も減っていきます。その分、残っている脳神経細胞には、高濃度に麻酔薬がいきわたりがちになるのです。

そんなこんなの結果、麻酔薬による全身緊急事態は、より重篤になりがちで、かつ、そこからの復活力は乏しいのですから、とっても、とっても危険なことです。

ですが、全身麻酔が必要とあらば、緊急事態に陥るのを未然に防ぐための監視を怠らず、麻酔薬による悪事を最小限にとどめる配慮や施しをするのが、私達、獣医師の使命なわけですね。

動物の社会も高齢化していて、高齢動物に麻酔をする機会は、グンと増えています。以前に比べると、麻酔前にできる検査も、麻酔中の監視装置も、獣医療の技術も、随分と進歩しましたが、それでも、予測しきれないことが起こらないとも限りません。かなり神経を使う仕事のひとつです。

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