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2011年4月22日 (金)

麻酔のリスク・・・意外と怖い「肥満」

全身麻酔のリスク。どんなに健康な動物でも、ゼロではありませんが、状態が悪いほど、リスクは高くなります。そして、重要なのは、どのくらい状態が悪く、どのくらいのリスクなのかです。それによって、必要な対処や注意事項が変わってきますし、全身麻酔に先だって、オーナーさんに説明する内容も変わってきます。

動物病院スタッフがチームとして、全身麻酔を伴う診療を行うにあたっては、それぞれの動物の麻酔リスクについて、共通の認識を持っていなければなりません。そこで、麻酔リスク分類という方法をとります。リスクを5段階評価して分類する方法です。

【クラス1】最も、リスクの低いレベルです。あるデータでは死亡率0.1%。健康な状態で、手術内容も、全身的な問題を引き起こさないであろう場合です。若い動物の避妊・去勢手術がこれにあたります。避妊・去勢手術だって、100%安全ではなく、わずかながらのリスクはあるのです。

【クラス2】ちょっと問題あり。あるデータでは死亡率3%。けど、何とか頑張れるであろうレベルです。一見、健康でも、老齢動物、新生仔、妊娠動物であるというだけで、クラス2になります。軽い貧血や骨折、症状のない心臓病を持つ動物。腹水や腹腔内に大きな腫瘍や多量の脂肪があるなど、呼吸を圧迫する要因がある動物も含まれます。ブルドッグやパグなどの短頭種は鼻、ノド、気管などの呼吸器系が狭くて換気不足になりやすいので、全く健康でもこのクラスです。同じく、肥満動物もノドや胸や腹の贅肉が呼吸の妨げになりますので、このクラスに入ります。

【クラス3】問題あり。あるデータでは、死亡率30%。例えば、腸に異物が詰まって、激しい嘔吐をしているとか、事故に遭って複雑骨折している、子宮に膿がたまっている、消化器に腫瘍ができているなど。どんな原因であれ、発熱や脱水、貧血があるものも含まれます。超高齢動物も、このクラスです。

【クラス4】かなり問題あり。あるデータでは、死亡率70%。命にかかわる病気があって、手術したからといって、治るとは限らないようなケース。重度の肝臓、腎臓、心臓障害がある動物。重度の脱水、貧血、衰弱、肺疾患がある動物などです。そして、恐ろしいことに、病的肥満はこのクラスに入ります。

【クラス5】瀕死の状態。あるデータでは、死亡率100%。助かる可能性は低いけど、手術するしかない状態です。

驚くことに、恐ろしいことに、病的肥満は、瀕死の状態と1ランクしか変わらないほど、麻酔リスクが高いのです。肥満が呼吸の妨げになることは、前述の通り。加えて、麻酔薬を投与した際、まず、大量の脂肪に行き渡ろうとするため、効いてほしい脳に届かないということが起こります。ですので、効かせるためには、麻酔薬の量を大幅に増やさなければなりません。ところが、脂肪に蓄積された麻酔薬は、排泄されるのに時間がかかるため、長時間、麻酔薬を抱え込んでしまうことになるのです。心臓や呼吸や、生命反応を弱める麻酔薬の影響を、通常よりも強く、長く受けるのですから、身体が耐えきれなければ、「死」に直結なのです。

肥満は、肝臓、心臓、関節の問題を起こすことや、猫ちゃんでは、糖尿病の大きな要因になっていることなど、良く、ご周知でいらっしゃると思います。ですがそれ以外にも、常に呼吸困難状態あり、常に酸素不足だということは、全身麻酔中という訳でなくとも、全身あらゆるところにとって、負担なわけです。そして、万が一、全身麻酔が必要な事態になったら、命キワキワの覚悟で処置を受けなければならなくなります。

ちょっと、ドキっとする話ですよね。「では、病的肥満って…。どのくらいから?」なんでしょうか。「肥満」の定義は、理想体重を15~20%超えたたレベル、そして、「病的肥満」は理想体重を30%超えたレベルとされています。つまり、5kgが理想体重の猫ちゃんが、5.75~6kgになると肥満猫、6.5kgで病的肥満猫なんです。

ますます、ドキッとしますよね。「じゃあっ!!うちのこの理想体重は何kg!?」となりますが、厳密に決めるのは難しいです。身体を触って、筋肉や皮下脂肪の付き方の体格チェックを目安にするのが一番良いと思います。ボディ・コンディション・スコアという基準がありますので、ご参考までに。

「え!?こんなに細いのが、普通なの!?」と、絶句される方が大勢いらっしゃるのではないでしょうか。

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