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2011年4月14日 (木)

尿検査の薦め

このところ、急に温かくなり、当院でも蚊をみかけるようになってきました。ので、随時、フィラリア予防開始のご案内を差し上げています。

フィラリア予防薬は、蚊によって運び込まれたフィラリア子虫が、皮膚の下や筋肉内にいるうちに駆除して、循環血液中へ入り込むのを阻止して、感染を予防する薬です。ですので、蚊が出始める前から投薬する必要はありませんが、動物の体内に運びこまれてから1ヶ月以上経って、血液中に入ってしまうと、駆除できなくなります。ですので、蚊が出始めて、1ヶ月以内には予防を開始しなければなりません。

ワンちゃんは、フィラリア予防を開始する際に、血液で感染していないかの確認検査が必要です。感染してしまっているワンちゃんに、予防薬を投与すると、フィラリア子虫が一気に死滅することにより、アナフィラキシー・ショックを起こすことがあるからです。

猫は、フィラリアにとって、本来の寄生相手ではありませんので、猫の体内で成虫まで育つことは、ごくごく稀です。それに、猫の小さな心臓では、1匹でも成虫が入りこむと、突然死もありうるというのに、♂♀両方が猫の心臓内で暮らし、子虫を産んでいるということは、更に、更に、稀な…というよりは、ほぼ、ありえないことですので、検査をする必要性は限りなくゼロに近いということになります。

なので、ワンちゃんのように、一度は病院へ行かねばならないといった大変さが無くて良いのですが、これも良し悪しで、ついでに健康診断的な血液検査をする機会がもてるワンちゃんにくらべ、猫ちゃんは健康診断を怠りがちです。

さらに、ワンちゃんにくらべ、病気や老化現象の進行に気付きにくいことが多いのです。具合が悪くなった老齢の猫ちゃんと来院されたオーナーさんの弁として、よく耳にするセリフ。「このこは今まで、全く、病気をしたことなくきたんです。」ですが、そんな、猫ちゃんは、たいてい、かなりの重症さんです。猫ちゃんの代弁として、手厳しい指摘をさせていただくとすれば、「私は、今まで、全く、病気に気付かずにきたんです。」が正しいと思われます。

決まった時間に、決まった量を食べる習慣付けがしやすいワンちゃんでは、食欲不振にすぐ気付くことが出来ますが、一日中ダラダラ食いだったり、複数頭の猫ちゃんにドンと山盛りごはん式になってしまうと、わずかな食欲低下には気付きようがありません。おそらく、ほとんど口をつけないほどの食欲不振になってからか、毎日、見ていても痩せたと気付くほど痩せこけてからの発見になってしまいます。

とくに、複数頭飼いでは、嘔吐物や下痢便があっても、誰のものかの実証が難しかったり、固まる砂を使用していると、尿の色や量の把握も不十分になってしまいます。お散歩に出かけるワンちゃんなら、運動したときの元気さ加減も解りやすいですが、気ままに暮らす猫ちゃんは、疲れやすくなっていることに気付かないまま、「しんどそう?」と感じた時には、かなりの重症さんになってしまっているのです。

そんな、猫ちゃんの健康状態を把握するのに、最も、お手軽かつ重宝するのは、体重測定と尿検査です。尿検査は、意外とたくさんの情報が得られます。若い猫ちゃん、高齢の猫ちゃんそれぞれで、メリットがあります。

若くて元気盛りの猫ちゃんにも多いのが、膀胱炎です。しかも、膀胱炎の原因として多い尿石症は、腎機能が低下して尿が薄くなった老齢猫ちゃんよりも、濃い尿をする若い猫ちゃんのほうが生じやすいのです。尿結石が詰まって、尿が出ない緊急事態に陥ったり、真っ赤な血尿をするほどに重症化する前に、治療を始めてあげることができれば、回復も早く、再発も起こりにくくて済むでしょう。

老齢になった猫ちゃんに生じる障害として、最も多いのが腎臓の機能低下です。その、指標となるものは多々あります。刻々と変化するのは、腎臓の大きさや内部構造の変化でしょうか。レントゲンや超音波検査でモニターすれば、少しずつの変化が確認されることでしょう。ですが、病的なレベルに来ているかどうかの判断としては、血液検査と尿検査のほうが優れています。

それぞれ評価するものは異なり、血液検査では、腎臓の排泄能が低下して、体内に滞りがちになっている老廃物の量を指標にしますが、尿検査では、尿の濃さ(比重)を指標にします。本来は、老廃物を排泄するのに、余分に水分が出てしまわないように、濃縮した尿を作るものですが、この機能が低下してくると、尿は薄くなり、おのずと量が増えます。

血液検査データは正常値でも、尿の濃さは薄くなり始めていることもあります。もちろん、その逆もありますし、両方とも正常でも、腎結石や腎嚢胞などの腎疾患が隠れていることもありますから、本来は血液検査や画像検査を含め総合的な評価をするのが望ましいのです。ですが、尿検査は、唯一、猫ちゃん同伴なしでできる検査で、かつ、比較的費用も安価ですし、多くの情報が得られる検査ですから、マメにチェックするには持ってこいの検査です。

尿比重(濃さ)の低下が腎機能の評価になるだけでなく、蛋白が多く出る腎臓疾患もありますし、ブドウ糖が出ていれば、糖尿病の疑い、大いにありです。ビリルビンが出ていれば、肝臓機能障害もしくは溶血(血が壊れる)性疾患を疑わなければなりません。もちろん、膀胱炎や尿結石についても調べることができます。

よく、お受けする質問は、「どうやって、尿を採るの?」です。1つは、尿をしようとしゃがんだ瞬間に、紙皿やトレイのようなもので受けてもらう方法です。ただ、猫ちゃん的には、トイレについて来られて、じっと見られて、しゃがんだお尻の下に、何かつっこまれたら…。落ち着かないですよね。排尿をやめてしまうこと、多々ありです。

Photo_3  病院では、食器を洗い上げるのに使う水切りかごをトイレとして使用しています。排泄物に砂をかけて隠す習性を満足させてあげるために、広告紙を短冊状に切ったものを入れておくと、たいていの猫ちゃんは、用をたしてくれます。これだと、尿の色や量が解りやすいですし、採尿も簡単です。お家のトイレでも、砂を入れずに広告紙を敷いておくなどして、所定の場所に置いておけば、案外、砂にはこだわらずに排尿するようです。このほうが、猫ちゃんの警戒心を挑発せずに採尿できると思います。

細菌培養の検査など、検査の内容によっては、病院で採尿し直さなければならないこともありますが、第一段階の検査は、ご自宅で採尿していただいた尿でも問題ありません。当院で診察歴のない猫ちゃんでも、尿検査だけお受けすることもできますので、お気軽にご持参ください。

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