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2011年6月

2011年6月29日 (水)

猫は暑くても大丈夫?

ほんとに訳が解らないほど、突然の暑さです。

ここのところ、暑くなったのをきっかけに、体調を崩したという高齢猫様のご来院が続きます。先日、久しぶりに会った知人まで、「2~3日前から、体調が悪くて、食欲が無い…。ビールで素麺を流しこむのがやっとや。」と言っておりました。(老猫と一緒やなあ。)と心では思いましたが、ちょっと、可哀想なので言わずにおきました。

熱中症を起こしやすいのは、夏真っ只中よりも、この、加速するじめじめとした暑さの初夏なんだそうです。体が、順応しきれないからです。メディアなどで、そんな注意を促す情報を見聞きしてか、皆さん、お家の猫ちゃん達の留守番中のことが気がかりになられ始めたようです。

「猫は暑くても大丈夫?」ここ数日、何度、質問されたことか…です。防犯上、窓を開け放しておくわけにはいかないし、クーラーを入れ続けるのは、不経済、かつ、日本全国で省エネが叫ばれている、昨今の日本事情もあり、心痛むところです。「大丈夫!」と、にゃんこ先生の太鼓判がもらえたら安心…と思われるのでしょう。

猫も生き物です。どんな暑さでも大丈夫なはずがありません。ただ、ペットとして飼育されることの多い動物の中では、暑さに耐える動物ではあります。そのことを、ちょっと過大解釈されていることもあるかもしれません。確かに、若くて、元気なにゃんこは、少々、暑くたって耐えます。ですが、すぐさま命にかかわらなければ良いというものでもありません。過酷な体験は、少なからず身体にダメージを与えるはずです。

どのくらいの温度にすれば良いか?」の質問には、これで回答することにしています。「あまり冷えるのが好きでない人がちょうど良いくらい。」

お住まいによって、風通しや陽の当たりが異なりますから、何度に設定すればよいとも言えません。よく、「ひんやりシートは?」「扇風機を付けておけばいい?」という質問もお受けしますが、いずれも、感触、体感上の「涼」であって、室内温度を下げるものではないので、それだけではダメですよね。

若~中年齢の健康な猫ちゃんなら、このくらいで十分だと思いますが、高齢になると、あらゆる身体の機能が低下しますので、今までと同じ暑さにも耐えなくなりますから要注意です。我が家は、毎夏、ドライで一番高めの設定温度にして外出しておりました。私の在宅中もこの温度です。毎夏、猫達もそれでご満足な様子でしたが、昨年秋に他界した18歳のジジイ猫が、昨年ばかりは、それでは耐えなくなっていました。

肝機能障害、腎機能障害、甲状腺機能亢進症と、年寄り病のオンパレードだった彼は、ダランと横たわり、胸を大きく揺らしながら、口を開け放してハアハア…の大ピンチ!大慌てで、冷房かつ最低温に設定、彼が入り込んで寝ていることの多い、部屋の隅っこに、扇風機で冷房の風を送り込むようにしたりと、必死のジジイ対策でした。

もっとも、パグやブルドッグのような、常に息が詰ったような品種のワンちゃんなどは、どんなに若くて健康でも、白クマさんかペンギン部屋くらいの寒さにしておかなければなりません。ただ、普通の暑さの部屋にいるだけで熱中症になってしまいます。それを考えると、確かに「猫は暑くても大丈夫」ですね。

スコティッシュフォールドやペルシャ系の猫ちゃんで、鼻の穴が非常に小さくて、鼻面が低いペチャ顔の猫ちゃんは、パグやブルドッグほどではありませんが、少々、それに近いものがあるようです。同じく、換気しづらく、体内に熱がこもりやすいので、激しく動いた時に、口を開け放してハアハア…というのが起こりやすいですから、ご注意を。

ともかく、暑さはまだまだこれから。皆様、ご自愛くださいませ。ちなみに、私は、いまだかつて「夏バテ」未経験です。食欲が無い…というのも、未経験です。もちろん、「夏痩せ」も未経験。むしろ、ビールもアイスクリームも美味し過ぎ!危険なほどに健康です。

この暑さの中、着々と体重増加中のぽっちゃりニャンコさんには、「また、増えちゃったねえ…。」と、注意は促しつつも、痩せてしまった老猫さんを思えば、「太れるのって、ある意味、健康!」って、自分への言い訳ではありませんが、内心、思ってしまったりもします。

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2011年6月13日 (月)

赤ちゃん誕生

春のにゃんこ病院は、仔猫ちゃんの来院がいっぱいです。

猫は、季節繁殖動物といって、繁殖期をもつ動物です。何から季節を知るかというと、日照時間です。だんだん日が長くなることを感じることで、発情ホルモンが放出され始めます。1~3月の早春がこの時期にあたるのですが、約2ヶ月間の妊娠期間を経て、仔猫が誕生する頃が、気候良く、獲物の多い季節になる仕組みになっているわけです。自然の仕組みは、素晴らしいですよね。

近年、ヒトに飼育されるようになって、獲物をとる必要が無くなったことや、室内飼育だと夜間も明るいせいで、日照時間が長いと勘違いする暮らしになり、初夏や秋にも発情をむかえるようになっています。

が、やはり春生まれがピークで、このところ、当院には、仔猫ちゃんの来院がいっぱいです。衰弱してしまった仔猫ちゃん、ミルクを飲まない仔猫ちゃん、ノミやシラミだらけの仔猫ちゃん、眼やに・鼻水・くしゃみ大連発の仔猫ちゃん、下痢してる仔猫ちゃん。中には、カラスに突かれ大怪我している仔猫ちゃんも。

あまりにも小さい仔猫ちゃんは、どうしたって、出来る治療が限られます。何よりもの助けは、ミルクや食餌を与えていただくことです。一度に少ししか飲まない、食べない仔猫ちゃんなら、その分、何回にも分けて与えていただかなくてはなりません。それでも、弱り果てて、ミルクや食餌がとれなくなってしまうと、命をつなぐのは難しいのです。

そんな、弱い動物だからこそ、子孫を絶やさないために、複数頭生まれる仕組みになっているわけなのです。ですが、来院くださる方の多くは、「どんなに弱っていても、病院に来れば何とかしてもらえる。」期待一心です。心苦しいことですが、状況をご理解いただいて、少し、心の準備もして頂くために、「助からないかもしれない。」と、辛い宣告をしなければならないこともあります。

ですが、ですが、生き物の命は、思い通りにはなりませんが、嬉しい裏切りだってあります。息絶え絶えで、ミルクも1滴ずつ飲み込むのがやっとで、冷たくなり始めていたのに、「先生!こんなに大きくなりました!」って、お連れくださったのは、フワフワ、まるまるの可愛い元気な仔猫ちゃん。「エ!?エーーーーー!!!」です。根気強く1滴ずつミルクを飲ませて、お世話されたお手柄に違いありませんが、その仔猫ちゃんの生命力ということもあると思います。半年後、避妊手術を受けに来院された、その「元衰弱仔猫ちゃん」は、かなりめに気の強い姉さんにゃんこに変身済みで、「あんた、私の事、助からないかも…。なんて、言ったでしょ!」とばかりに、ガリッと一発、仕返しされてしまいました。

ご老体のにゃんこさんで来院された方も、仔猫ちゃんの声を聞くと、思わず、仔猫だった頃を思い出すらしく、「あんたも、あんな頃があったのにねえ…。」なんて、仔猫の頃の話をお聞かせくださったりして、驚く生い立ちや、微笑ましいお話の数々を楽しませていただいております。

猫の成長は早いもので、約半年でほぼ大人になりますから、「仔猫」と呼ばれる時代は、平均寿命約15年のうちの、ほんの数ヶ月。あとは、ずっと「猫」なので、可愛い「仔猫」時代の写真は、めいっぱい撮っておかなくてはです。思えば、うちの「猫」どもは、「仔猫」時代の写真があまりありません。今になって、「あれえ?」って感じで、ちょっと後悔。

猫の話と一緒にしたら叱られますが、先日、獣医さん仲間の先生に、待望のご長男が誕生されました。予定日を聞いていたので、日が近づいてからは、ご無事に誕生されるかが気掛かりでなりません。誕生されたら、ご自身の動物病院ブログに載るかもしれないと、毎日、更新チェックを入れたり、近しい知人に、「まだか?まだか?」と尋ねてみたり。そして、やっと、「昨日、男の子が誕生した。」との一報。

早速、「おめでとう!!!メール」をお送りしたら、返信メールには、頼んだわけでもないのですが…「生まれたての赤ちゃんを抱く、大感激中のパパ」写真の添付が。「髪がフサフサで安心した。」との、近頃、髪密度減少中なパパのコメントだったので、「ちょっと、おでこ、広くない?」ってチャチャを入れたつもりが、「おでこと口は、わしに似とるんや。」と親バカ返信。

さすがに我が子のことは、動物病院ブログに載せないんだ…と思っていたら、とうとう、我慢できなくなったらしく、ワンちゃんや猫ちゃんの写真に続き、突然、コメントもなく、「人間の赤ちゃん」の写真。次の日には、突然、コメントもなく、「赤ちゃん誕生に大感激して号泣しているパパ(院長先生)」の写真。解るヒトにしか解らない写真の投稿に、ひそかに、大笑いしてしまいました。で、その次の日は、帝王切開で生まれたチワワちゃんファミリーの写真。赤ちゃんラッシュです。ちなみに、犬は季節繁殖動物ではありません。それぞれのワンちゃんが半年毎くらいの周期で、排卵の時期を迎えるのです。

ところで、動物もヒトも、幼少時代は顔が丸いですよね。これは、心理的に「可愛い」というイメージを与えることで、弱い時代なゆえ、助けてもらい、守ってもらえるようになっている仕組みなんだそうです。自然の仕組みは何でも素晴らしいです。

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2011年6月 8日 (水)

マイクロチップ

P6080393 ♪迷子の迷子の仔猫ちゃん♪・・・お家を聞いてもわからない。・・・犬のおまわりさん、困ってしまって…♪のイラストの「マイクロチップ」啓蒙ポスターを見て、「これは、うまい!!」と大気に入りしたので、待合室に掲示することにしました。

犬のおまわりさんが首にかけている「リーダー」で、仔猫ちゃんに埋め込まれているマイクロチップのデータを読み取っている図です。

かなり一般的になってきた「マイクロチップ」です。ペットショップから来る猫ちゃん、ワンちゃんには、すでに挿入済みのコが増えました。とても、良い傾向だと思います。海外へ渡航するのには義務付けている国がほとんどです。

ワンちゃんは、狂犬病予防法により、狂犬病予防注射接種、登録が義務付けられていて、「鑑札」という登録番号付きの札を首輪に付けなければならないという掟があり、これが一番確実な迷子札だから!と、つい、数年前までは声を大にして、啓蒙してまいりましたが、今時ですと、それも少々時代錯誤なことに感じられます。

もちろん「鑑札」の効力は絶大です。間違いなく、身元判明につながりますし、付いていることが見えるのが強みです。ですが、ちょうど、首元にブラブラする物体があれば、「かじってみようかなー。」って、チャレンジするワンちゃんがいるんですよね。歯型でボコボコになって、番号が読み取れなくなった鑑札は、全く持って意味無しです。危険なことに、食べてしまうコもいるので、ブラブラしないよう首輪に巻きつけるかたちで付けるようにも、お薦めしていました。

ただ、本当に迷子になった際には、長く放浪しているうちに外れてしまうことがあります。室内で自由に暮らしていて、お散歩の時だけ首輪をするワンちゃんだと、脱走して迷子になっても、鑑札が付いていないってことになりかねません。

そんなこんなを考えると、一度埋め込むと、脱落、消失することも、データが書き換えられることもないマイクロチップは、絶対的に確実です。 リーダーから発信される電波を利用して、データ電波を発信するので、電池いらずで半永久的に利用できるんだそうです。(このへんの物理学チックな仕組みは、苦手分野なので、質問しないでくださいね。)

Chip直径2mm、長さ8mm~12mmあるものなのですが、不思議と触っても解りません。レントゲン写真に写っているのを見て、「ホントに入ってたんだあ…。」なんて方に、大笑いすることもあります。

こんな小さなものに、名前や住所や電話番号なんかの、色んなデータが入ってる!?…わけではありません。リーダーが読み取るのは15桁の数字(番号)です。もちろん、それぞれのマイクロチップには、それぞれ世界で唯一の番号が記録されています。マイクロチップのデータ管理を行っている組織がありますので、飼主さんのほうでデータを登録しなければなりません。

何ら、害のあるものではありませんが、サイズ的な問題があるので、猫ちゃんなら生後4週齢くらいからなら挿入可能です。皮下注射するのと同じ要領で挿入します。ちょっと、太めの針ですが、局所麻酔をする方がよっぽど痛いので、一瞬だけ我慢してもらって挿入します。猫ちゃんが脱走をくわだてる危険が増すのは、生後半年くらいからですので、避妊・去勢手術で全身麻酔する際に挿入するという手も良いでしょう。

先日の、獣医師会でも、マイクロチップ普及の重要性が話題にあがりました。話の発端は、先の大震災での、身元不明動物の問題でした。マイクロチップ普及で、迷子動物が飼主さんの元へ戻れる可能性がグッと増えます。悲しいことではありますが、たとえば、亡くなってしまっているのを保護されてのことだとしても、最期に戻って来てくれます。これまで、あまり考えに及ばなかったマイクロチップのもう一面の役割ですが、これは、大きな意味があると感じさせられます。

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2011年6月 1日 (水)

放射線治療

ヒトと同じように、ワンちゃん、猫ちゃんも長生きするようになり、増えたもののひとつが腫瘍の病気です。発癌性物質だとか、ある腫瘍はウイルスがらみだとか。いろいろと、原因究明が進みつつはありますが、あらゆる腫瘍の理由は解明されず、また、結局のところは、「遺伝子の突然変異」によるもの=長生きしたからなのです。

動物医療界の腫瘍治療は、ヒトの腫瘍治療の後に続けとばかりに、日進月歩の勢いで進歩しています。手術をして摘出することや、化学療法剤(抗癌剤)の投与も、以前からされてはいましたが、近年、ワンちゃんや猫ちゃん達が、私達との暮らしの中で、ずっと近い存在になるにつれ、「できるだけのことをしてあげたい。」という気持ちが、ひしひしと伝わってきます。積極的に治療を進めるケースが多くなりました。

そんな中、何と言っても、画期的に進展したのは、放射線治療です。なぜ…なのかを考えるに、

①CT、MRIなどの普及により、腫瘍の発見力が進歩したことで、予め、手術で完全には摘出できないことの予測ができたり、再発も早期に発見することができるようになりました。こんなとき、化学療法剤(抗癌剤)よりも放射線療法が効果的な腫瘍なら、放射線療法を併用する作戦となります。

②設備を持つ施設が増えました。といっても、まだまだ限られています。日本全国で、やっと片手で足りない位にはなったけれど、まだまだ両手では余る位しかありません。ですが、関西は恵まれているのです。三重県に、かつてから放射線治療を手掛けていらっしゃる病院がありますし、大阪府立大学獣医学部がりんくうに移転した際、立派な附属病院が併設され、堺にあったころにも備えていた放射線治療設備に加えて、別のタイプの治療設備も導入されたのです。これは、私達、大阪の獣医業界人の間ではセンセーショナルなニュースでした。

③ニーズが増えたから。一番の理由は、これに尽きるはずです。化学療法剤(抗癌剤)はあまり効果がないけど、放射線治療なら効果の良い腫瘍の場合。顔の腫瘍なんかで、手術して採ろうにも、採れない場所にできた腫瘍の場合。これらは、放射線治療に頼るしかありません。ですが、費用のかかる治療です。費用がネックになることが多々のようですが、それでも、随分、ニーズは増えてきているようです。

ヒトでは、以前から一般的にされている放射線治療ですが、近しいヒトに経験者がいなければ、どんな治療をするのだか想像つかないかもしれません。そういう私も、動物の放射線治療は、ビデオで見たり、見学したこともありますが、ヒトのそれはTV番組の乳癌治療の特集で見たことがあるだけです。静かに処置用のベッドに横たわり、照射を受けているのを見て、妙な感じがしました。動物では、こうはまいりません。

放射線治療にあたっては、「どこに、どの位の容積の腫瘍があって、どの方向から、どの位の深さに、どの位の放射線量を照射すればよいのか…。」という、治療計画を立てなければならず、それは、より、効果的に、かつ、健常なところへのダメージを最小限に留めるために立てられるのです。照射部位は、ピンポイントで、ちょっとのズレも、照射中に動いてしまうことも許されません。ですので、動物の放射線治療には、完全な全身麻酔が必要です。

Souchi受ける治療は、レントゲン撮影装置をでっかくしたような、装置から照射される放射線を当てるだけですが、全身麻酔をして照射できる状態に準備しなければなりませんので、ヒトのように簡単にはまいりません。それに、たいていが高齢動物で、状態も良くはない動物に全身麻酔をしますし、治療計画によっては、毎日だったり、一日おきの照射=全身麻酔を受けている動物ですので、より、より、注意深くモニターしながらの治療になります。

1クールの照射間隔や回数は、その治療計画によっても、異なるようですが、先日受けたセミナーで、講義をしてくださった先生のところでの一般的な方法は、週3回で合計7回だそうです。ざっくりとした必要費用は、1回あたりが麻酔前の諸検査、麻酔料なども含めて10万円前後、合計7回の1クールで50~60万円だそうです。

………………。ですね。ですが、舌や口内に腫瘍ができて、食べることができなくなったケースや、鼻にできた腫瘍のせいで、呼吸が苦しくなってしまったケース。脳腫瘍で、クルクル回り続けてしまうケースなど。見るに忍びなかった症状が、放射線治療が奏功して、その後、ほどほど機嫌良く、余生を過ごせているのを見ると、確かに「価値はある…。」とうなずかされます。最も、それ以前に、その設備投資額を想像すると、恐らく、採算度外視の格安に違いないのですが。

Himac_fig_01 ヒトでは新たな癌治療として重粒子線癌治療が始められています。ある保険会社のテレビCMに登場する「建物全体が癌治療装置」というヤツです。公的保険の適用外ですので、全額自己負担、1回の治療費は約300万円だとか。いろんな意味でスゴイことです。

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