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2012年7月

2012年7月30日 (月)

犬猫用尿比重計

尿比重とは、尿の濃さのことです。腎臓は、体内の老廃物を排泄するためだけでなく、体内の水分量、血圧、ミネラルバランスなど様々な調整をしながら、尿を生成しています。

体内の水分が増えて血圧が上がると、尿を生成させるホルモンが作用して、腎臓での水分排泄が増えますので、薄い尿が産生されます。その逆では、濃い尿を産生して、水分を体内に止めようとします。うまくできているものです。

ところが、腎臓で尿の濃さを調整する機能が低下してくると、状況にかかわらず薄い尿しか産生できなくなります。なので、尿比重が腎機能の指標になるのです。

腎機能障害の初期には、血液検査では腎蔵機能関係の数値が正常でも、尿比重の低下だけがみられるケースもありますし、また、その逆もあるので、両方とも、モニターするのが望ましいのです。

この尿比重は、「屈折計」という測定器を使用して測定するのですが、日本には、ヒト用のものしかありませんでした。もちろん犬猫の尿でも、測定はできるのですが、成分の違いから、本来のデータよりは、少し高めの数値で出てしまいます。それと、目盛が1.040までしかありません。猫ではこの1.040を超えるほど濃いのが正常なのですが、1.040あたりを上下するケースで、微妙な変化が計測でず困ることがありました。

Masterurc_jm_4当院でも、ヒト用の屈折計で測定しておりましたが、日本製でデジタル表示されるものの犬猫用ができましたので、当院でも犬猫用を使用することにしました。これなら、犬では1.060まで、猫では1.080まで測定できます。今までにヒト用で測定していた猫ちゃんは、当面、両方で測定値を出して、モニターを続けますのでご安心ください。

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尿検査は、尿比重が腎機能の指標になるだけでなく、糖尿病の発見、肝障害の発見にもなります。若い猫ちゃんにも多い膀胱炎の早期発見にもつながりますので、尿検査はとっても有用な健康チェックなのですが、ヒトと違って「尿を取る」のが、ちょっと大変ですよね。

あるオーナー様からお聞きした方法ですが、100円ショップで購入した調理用の「おたまじゃくし」で、オシッコし始めたら直に受け取るそうです。なかなか、名案かもしれません。

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2012年7月26日 (木)

飲むノミ駆除剤

以前に、このブログでもご紹介済みの、飲むノミ駆除剤「コンフォティス®」ですが、今まで、犬でしか認可されていませんでしたが、この度、猫の認可もとれたとのニュースが入ってまいりました。

今のところ、包装は従来のままなので、「犬用」と書かれて、ワンちゃんの写真しか載ってないものです。これに、猫用の説明書きを添えて処方することになっています。

犬と猫で、体重当たりの薬量が異なるので、注意してください。体重によってS、M、Lの3種類から選びます。Confortis_image

美味しい味が付いていて、食べ物に混ぜて与えやすくなっていますので、警戒心が強くて、スポット剤をさせない猫ちゃんには朗報ですね。

ノミは一年中生存していますが、暑い季節は繁殖サイクルが早くなり、大発生しやすいので、室内に潜んでいたノミが急に増えて大変な事態になります。このところ、ご家族もかゆくて大変!と、大慌てで来院される方が多くいらっしゃいます。

室内で卵→幼虫→蛹→成虫のサイクルができあがっていますので、室内の清掃や駆虫も重要です。猫ちゃんに使用するノミ駆除剤は、ノミ成虫を駆除するだけでなく、卵の孵化や、幼虫の脱皮を阻害する成分も含まれていますので、根気良く継続すれば、やがて撲滅するはずですが、重要なのは、涼しくなってノミ繁殖が弱まり、「撲滅した?」と思っても、辞めずに一年中継続することです。ノミの卵はとても強くて、寒くて繁殖に合わない季節を乗り越えて、暖かくなるのを待っていられるのです。

お恥ずかしい話、私も、学生時代にノミを大発生させてしまったことがあります。夏休みに牧場実習で2週間ほど留守にする間、猫を知人に預けて部屋を閉め切っている間に、一気に繁殖したようです。帰宅して部屋に足を踏み入れたとたん!、飢えているノミがいっせいに、私の足めがけて、ジャンプ!!!お~~~そろしーーー事態でした。身をもって、ノミの繁殖力の驚異を学習した夏でした。

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2012年7月20日 (金)

犬の肺水腫、猫の肺水腫

先だっての連休くらいから、突然の猛暑ですね。人も、動物も、ついていけない異常気象ぶりです。

連休3日目、出先で実家の母からメールが。「ルナが昨日から、ノドに何か引っ掛かったような咳をして、白い泡みたいなのを吐いてる。元気が無く、ごはんも食べない。今日、診てもらえますか?」

ルナは15歳と高齢な、シーズーっぽい雑種犬です。小型犬に多い僧帽弁閉鎖不全症があることを、7歳位のころに発覚してから、その進行を最小限にしようと、ずっと血管拡張剤を内服してきました。そのお陰で、若くして発現したわりには、今まで、症状を出すことなく、長生きしてきました。

「咳」「泡を吐く」は、犬の肺水腫の典型的な症状です。もっと、瀕死なほどの肺水腫を起こすと、血交じりのピンクの泡を吐くこともあります。

そういえば、10年ほど前に、実家を建て替える際に、「エアコンなどいらん!」という節約家の父と、「歳とって、1人になって、給油するのも大変になった時のために取り付けれるようにはしておきたい!」という母とで、エアコン取り付けをめぐってもめていたことを思い出しました。

ひょっとして、実家にはエアコンというものが無く、ルナちゃんは、この猛暑の中、暑い部屋でハアハアさせられていたのかも…と、心配になりました。動悸が激しくなり、心機能が追いつかなくなってしまったら、循環不全に陥り、肺水腫を起こしてしまいます。

肺は、本来乾いたスポンジのような組織ですが、血のめぐりが悪くなって、血液が滞り、血管がパンパンになると、血管から水分が滲み出て、肺は湿ったスポンジのようになってしまいます。これが「肺水腫」の状態で、その湿った水分を出そうとする生体反応が「咳」なのです。重症になると、呼吸困難、酸素欠乏となり、命にかかわる事態になってしまいます。

大急ぎで、母に電話しました。「まさか、暑いところでハアハアさせてるんじゃないでしょうね!」「ハアハアしてるわよ。」(やっぱり!)母の部屋だけには、エアコンを取り付けていたようなので、とりあえずは、ハアハアしないくらいまで、涼しくするように命じました。

私が実家に駆けつけた時には、ハアハアも静まり、咳も少なくなり、母が手から与えた食餌も食べたようでした。血色(舌の色など)や、呼吸音も心配したほど悪くありませんでしたが、日中、泡を吐くほどの咳をしていたので、利尿剤を注射して強心剤を内服させることにしました。その後は、涼しくしてもらって、ボチボチやってるようで、一安心。

その連休明け、「呼吸が荒いんです。」という外来が次々と続くのに驚きです。猫の肺水腫は、あまり咳をしません。呼吸が荒いのも、よほど重症にならないと気づかないほど、猫の肺水腫は解りづらいものなのです。

念の為に、レントゲン検査をさせていただきましたが、皆さん、幸い異常なしです。どうやら、突然の猛暑で、暑さ対策万全でないままに、お留守番をしていた猫ちゃん達が、暑さでバテてしまっていたようです。本格的な熱中症に至らずで良かったですね。

猫は犬に比べると、暑さに耐える動物ですが、生き物であるからには限界があります。とくに、高齢の猫ちゃんは十分注意してあげてください。人間の4~5倍の早さで老化しますので、15歳→16歳→17歳は、ヒトなら80歳→85歳→90歳くらいの老化ぶりです。昨年耐えた暑さに、今年は耐えれなくなっています。

節電しなくてはなりませんが、工夫して、ヒトも動物も夏バテしないように、お過ごしくださいませ。

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2012年7月 7日 (土)

細胞診

その名の通り、細胞を診察することです。

例えば、「しこり」が出来ている場合に、その「しこり」が悪性腫瘍の疑いがあるのかを調べるための手段です。「しこり」から注射針で吸い取った細胞を、ガラス板に吹き出して、染色してから顕微鏡で診察するのです。

悪性の細胞は、大小不揃いだったり、「核」という細胞の遺伝情報を担うものが大きかったりといった、いくつかの特徴がありますので、その特徴の強弱によって、悪性度無し~低い~高いと分類するのです。

他にも、胸水や腹水、尿などを、ガラス板に薄く引きのばして染色すると、腫瘍細胞、細菌、炎症細胞などなど、診断に役立つ情報をGETすることができます。

皮膚病でジュクジュクしているところに、ガラス板をペタッとくっつけて細胞を採取して検査することもあります。出てきている細胞の種類で、化膿性なのか、アレルギー性なのかの判断をしたり、細菌感染が無いか、あれば、どんな仲間の細菌なのかを調べることもできます。皮膚の奥にあるべき細胞が採取されるケースでは、免疫異常のために、自分の皮膚を攻撃する怖い病気のこともありますから、更に詳しい検査をしなければなりません。

当院では、血液検査の際には、必ず、血液の細胞診を行います。血液中に含まれる細胞は、赤血球、白血球、血小板で、血球計算機という器械でオートマチックに計測してくれますが、細胞診をしなければ得られない情報もたくさんあります。

特に、貧血がある場合は、赤血球に寄生している寄生虫がいないかを診たり、赤血球の大きさや、薄さ、幼弱さ(=新しく作られている)などから貧血の理由を探らなければなりません。白血球には、役割の異なるものが5種類あって、そのバランスから体内で生じていることを知ることができます。白血病のような骨髄の病気になると、異常な細胞が出現します。猫では、犬やヒトと異なり、血小板が塊になるため、器械で測定した血小板数はあてになりません。実際に、診て十分数あるかを判断する必要があります。

私が獣医さんになりたての頃、とある獣医科大学の研究室へ、細胞診の勉強をしに研修生として通っていたことがあります。山のようにある附属病院で検査された標本のストックを、一緒に保存されている診断書を読みながら、片っぱしから診て勉強しました。解らないことは、学生さんに尋ねると教えていただけるので、とても、勉強になりました。今も、私の診療ではこの時の勉強が大いに役立っています。

先日、「細胞診」のセミナーに参加しました。講師の先生は、当時、その学生さんだった方です。あの頃は、お尋ねすると、少し照れくさそうに、でも親切に教えてくださる好青年でしたが、いまや、体格も風貌もすっかり立派になられて、講義内容も素晴らしかったので、身内のオバサン気分で嬉しくなってしまいました。私も、シワが増えていく分、獣医力もアップさせていかなければなりません。

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