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2013年8月

2013年8月23日 (金)

猫のアトピー

「アトピー」の定義には様々な論議がありますが、先日、お聴きした講演では、難しい話抜きで、「フードアレルギーやノミアレルギーなどの原因を特定できるアレルギーを除く、アレルギー性皮膚炎をアトピーとする。」とされていました。要は、何だか解らない痒い皮膚病=アトピーでいいんじゃない?ってことです。

で、「アトピー」って何よ?講師の先生は、その師匠に「アレルギーを起こしやすい体質。」と教わったそうです。上手い表現だと思います。「体質」なんです。治るものではなく、生涯付き合っていかなくてはならない「体質」なんです。

ヒトでも、悩まされるアトピー。動物にとっても、痒みは大きなストレスですし、容赦無く掻いたり噛じったりするのを制御するために、エリザベスカラーを付けざるを得ないと、更に、ストレスチックで、可哀想なばかりです。

「動物病院へ行けば、すぐに治してもらえるに違いない。」そんな期待がおありなんだろうと思います。実際、痒みを無くすことは簡単です。多量の副腎皮質ホルモン剤(コルチコステロイド)を投与すれば、どんな原因であろうと、いったんは治まるでしょう。

ですが、治るものではない「体質」なので、痒みが出る度に、副腎皮質ホルモン剤で症状を抑えるのを繰り返すことが良いとは思えません。だんだん、効きが悪くなってくるはずです。逆に副作用は増していきます。皮膚が薄くなり、抵抗力が弱まって、感染症がコントロールできなくなったり、糖尿病を惹起する危険もあります。

生涯付き合わねばならない「体質」には、そのつもりで辛抱強く向き合うしかありません。

まず、アレルギー以外の痒くなる問題を除外しなければなりません。

ノミを見つける、見つけないにかかわらず、ノミ予防を徹底します。ここで、「ノミはいません!見たことないし。外には出ないし・・・。」なんてことを論議するより、容易にできることはやっておくのです。

細菌感染や真菌感染は、二次的なものかもしれませんが、これも、コントロールしなければなりません。中には、その細菌や真菌がアレルギーの原因物質になっていて、症状を増強していることもあるのです。

それでもダメな場合、猫の場合は、フードアレルギーの除去試験をすべきとのお話でした。フードが関与しているケースが結構多いのだそうです。除去試験には、アレルギー対策用の療法食を利用されているそうです。1ヶ月間、他の食べ物は一切与えないようにして、良くなるか、マシになるか、変わらないかをみていただくそうです。

フードだけが問題のケースでは、かなり良くなります。マシになるケースは、フードの関与以外にも、原因があるということになります。まったく変わらないなら、フードは関係ないと思われます。

フードの関与以外にも原因があるとしても、フードの管理だけで、痒みレベルが許容範囲なら、それでいいわけですし、アレルギーを抑える薬剤が必要だとしても、痒みのレベルが下がった分、投薬量も減らせるはずですから、ぜひとも、一度は確認しておくべきなのです。

そこまでしても、ダメな場合には、アレルギーを抑える薬剤でコントロールするしかありません。速攻力のある薬剤は副腎皮質ホルモン剤ですが、前述したように副作用も心配しなければなりません。以前は、猫は副作用が出にくいから大丈夫的な見解が優勢でしたが、近年は、猫でも、やはり、長期投与は避けるべきとなっています。

新しく、アレルギーを抑える薬剤として使用されているのは、免疫抑制剤です。猫では、むしろ、こちらの薬剤の方が効くケースがあるのだそうです。

もちろん、薬剤ですので、副作用が全くないわけではありませんが、副腎皮質ホルモン剤のように、糖尿病を惹起するような問題は出ませんし、だんだん効きが悪くなることもなく、たいていのケースは、安定していれば、毎日投与を隔日へ、2日あけて、という具合に減らしていくことができます。

難点とすれば、価格が少々お高いのと、猫に投与するには大きめなカプセルなことですが、猫用にと、液剤が開発されましたので、飲ませやすくなりました。カプセルを上手に投薬されてる方もいらっしゃいますが、味さえ許容してくれれば、液剤のほうが楽かもしれません。

これは、私の体験上のお勧め事項なのですが、フードではない原因があると思われるなら、最も可能性の高いハウスダスト対策を講じるべきだと思います。うちのアレルギーにゃんは、一時は、全身を掻き壊すほどの痒がりようで、免疫抑制剤でコントロールしていましたが、転居を機に、カーペット、布団、ベッド、押入れ無しの生活にさせたら、投薬の必要がなくなってしまいました。

それでも、ちょっと、お掃除を怠ると、喘息の咳をします。「ゴホッ」(掃除しろ!)「ゴホッ」(掃除しろ!)・・・可哀想だけど、ちょっと、嫌な感じです。

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2013年8月14日 (水)

猫の甲状腺機能亢進症

獣医さんの様々な団体が勉強会を企画していて、平日夜の9時や10時から行われるものもあります。仕事を終えてから夜中まで。獣医さんはタフでないと務まりません。

先だっての夜勉強会のタイトルはコレ。講師は、神奈川県で開業されていて、内分泌学についての論文を専門誌に投稿されるなどご活躍の先生です。

実は、実は、はるか昔。私が大学6年生の時に、就職活動をかねて、この先生の病院を見学させていただいたことがあります。もっとも、その頃は、この先生もまだまだ若手で、まさか、こんなお偉い先生になられるとは思いませんでした。

大勢の学生が見学にみえるでしょうから、私のことなど覚えていらっしゃるはずはありませんが、私的には嬉しい再会だったものですから、ずうずうしくも名刺をお渡しして、ご挨拶させていただきました。

お話は、開業医の先生らしく、小難しいお話抜きの、実践的で解りやすいものでした。おおむね、当院での治療方針に合致していたので安心しましたし、かつ、プラスαの情報が得られて有意義な講義でした。

甲状腺機能亢進症は、甲状腺の腫瘍化によって生じる疾病ですが、腫瘍化に係わるものとして、環境内の有害物質が挙げられているそうです。アメリカで1970年以降に急増、近年、日本でも報告が増えましたが、まだまだ、アメリカの比にはなりません。香港では、更に少ないそうです。これは、有害物質量の差なのか、検出技術ないしは飼主様の意識度(調べる機会)の差なのか。興味深いところです。

甲状腺機能亢進症の治療法としては、外科的に甲状腺を摘出するか、内科的に抗甲状腺ホルモン剤でコントロールするかのいずれかになります。摘出手術を支持するお話も聞くことがありますが、今回の先生は、内科的コントロールを推奨されていました。

ほぼ全症例が高齢なので、麻酔、手術にはリスクがあるということ。摘出して甲状腺ホルモンが不足してしまうと、半永久的に甲状腺ホルモン剤を投与しなくてはならなくなること。甲状腺に接する上皮小体に障害が生じると、体内のカルシウム調節がきかなるという致命的な問題が起こりうること。通常、甲状腺は頚部気管の両脇に1対2個付着しているのですが、胸の中まで落ち込んでいて摘出できないケースや第3の甲状腺が潜んでいて、摘出手術が無駄に終わることもある。というのが、その理由です。

ですが、抗甲状腺ホルモン剤の投与で副反応が出る症例もあり、その場合は手術を考えるとのことでした。薬物アレルギーで皮疹が出るとか、血液中の白血球や血小板の減少症が最も多い副反応です。とはいえ、そうそう多く生じるわけではありません。

むしろ最も用心しなければならないのは、潜んでいる腎機能低下を助長してしまわないようにコントロールすることだと強調されていました。確かにそうだと実感します。そして、甲状腺機能亢進症に随伴して生じる、高血圧、心機能障害、肝障害、胃腸障害などにも、必要な対処をこうじつつコントロールしなければなりません。

一方、データ上は甲状腺機能亢進症の範疇に入っていても、それに随伴する問題が何ら生じていないのであれば、治療する必要はなく、定期的にモニターするようでいいとおっしゃっていました。ですが、治療の必要性が出始めれば、少量の抗甲状腺薬で容易にコントロールできる、より早期に開始することを推奨されています。これもまた、そうだと実感します。

甲状腺機能亢進症発症に気付くきっかけとなる症状で多いのは、「消化器症状」と「体重減少」のことで、これも、当院と合致することでした。

日本では、アメリカほどの報告数がない疾病ですが、痩せてきても、「歳だから。。。」とスル―してしまっている猫ちゃんの中に、まだまだ、甲状腺機能亢進症猫が潜んでいるに違いないと思います。

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